研究課題/領域番号 |
16K20529
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊藤 達郎 北海道大学, 大学病院, 医員 (70750933)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スラリー埋没加熱処理法 / GKラット / インプラント / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
糖尿病など骨代謝を低下させる疾患は、骨の治癒や骨とインプラントとの結合を妨げ、インプラント治療に対する高いリスクとなることが報告されている。申請者は、簡便かつ低コストでハイドロキシアパタイトの表面処理ができるスラリー埋没加熱処理法に着目し、この処理法により表面処理したチタンを骨に埋入するとインプラント体と骨が早期に結合することを明らかにした。そこで、本研究においては、骨とインプラン体の結合に有効なこの処理法を応用することで、骨代謝の低下した糖尿病患者への安全・確実なインプラント治療の適応拡大に繋げることを目的として研究を行った。 そこで、本研究において糖尿病モデルラットであるGKラットを実験動物として用いて上顎骨にインプラント(チタンスクリュー)を用いて抜歯即時埋入を行った。 スラリー埋没加熱処理は、第3リン酸カルシウム粉末と蒸留水を混練したスラリーにチタンスクリューを埋没し、電気炉にて大気雰囲気中,650℃で2時間熱処理を施して表面処理を行い、これをラットに埋入したものをスラリー処理チタンスクリュー埋入群とした。コントロール群としてスラリーに埋没せずに熱処理のみ行ったチタンスクリューを埋入したものを非スラリー処理チタンスクリュー埋入群とした。埋入後1週および4週で試料を周囲組織とともにインプラントを摘出している。また、埋入時とサンプリング時にラットの血糖値および体重を計測している。 本年度では、スラリー処理チタンスクリューを5週齢雄性GKラットに埋入し1匹は1週後に、2匹は4週後にサンプリングをし、非スラリー処理チタンスクリュー埋入群も同様に行った。しかし、スラリー処理群では3匹中2匹でスクリューが脱離し、非スラリー群でも3匹中1匹でスクリューの脱離が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を行うにあたり、まず、In vitro においてReal Time PCR を行った。その結果、骨分化の遺伝子マーカーであるCbfa1およびCollagen-1の発現が、スラリー処理したチタン板上に播種した骨芽細胞では非スラリー処理したチタン板上のそれに比べて優位に高かった。それにより、本表面処理が細胞の骨分化において有効であることを確かめた。 また本研究においても、申請者がこれまでIn vivo実験で用いた健全Wistarラットは4週齢で体重100gであったが、GKラットは糖尿病にり患しているため発育が遅く、4週齢では体重90gと体が小さいため、5週齢で体重が100gになるのを待ってから実験を行った。それにより、チタンスクリューを埋入するのに十分な上顎骨の成長を認められたが、成長に伴って骨質が固くなっておりスクリューが十分に骨深くまで埋入ができなかった。そのため、埋入後のチタンスクリューの脱離を招いてしまった。さらなる埋入実験を行うにあたり再度GKラットの埋入時期を検討している。 以上の理由により本研究はやや進捗が遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
先の実験において、チタンスクリューが十分に骨深くに埋入できないとスクリューの脱離を招いてしまうため、骨質(硬さ)を考慮してGKラットも健全ラットと同様に4週齢で行っていくこととした。また、4週後にサンプリングするラット群も今後は1週目で血糖値および体重の計測を行うことを検討している。 今後、さらにGKラットにチタンスクリューを埋入し、H.E.染色および免疫組織染色による骨組織および上皮組織の組織学的検索、Villanueva bone染色による組織計量学的検索を行っていく。 当初はGKラット群と健全ラット群の比較検討を行うために、健全ラット群においても組織計量学的検索をする予定であった。しかし、研究計画が遅れており、健全ラットではIn vitroおよびIn vivoにおいてスラリー埋没加熱処理による骨髄細胞の骨分化および骨形成の有効性が示されているため、必要であれば省略する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において、先の理由による研究遅延のためにGKラットの使用個体数がまだ少ないため。本研究においてはGKラットを40匹使用する予定であり、1匹あたり17000円するため使用個体が少ないと助成金の使用金額に大きく影響してしまうため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、GKラットを使用した実験を継続するため、ラットの購入費として使用する。また、免疫組織染色を行うための試薬を購入し、組織学的検索を行っていく。可能であれば論文にまとめ投稿する予定である。
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