インプラント治療は欠損補綴の治療法の一つとして、頻繁に活用されるようになり、口腔機能回復に重要な役割を果たしている。一 方で、インプラント治療後のトラブルも増え続けており、なかでもインプラント周囲炎はその頻度が高い。現在、様々な治療法が試み られてはいるが、治療法が確立されているとは言い難い。本研究では、インプラント周囲炎治療を通じて、原 因となる細菌叢と臨床 的パラメーターを記録し、細菌叢の変化と治療効果との関連を検討すると 共に、インプラント周囲疾患の診断・治療上の指標となる 細菌学的因子を解明し、新たな治療プロトコールを開発することを目的とする。 本年度はさらなるサンプル数の増加のため、東京医科歯科大学歯周病外来とインプラント外来にて、倫理申請をおこなって同意を得られた患者から、同一口腔内の歯周炎部位、健常歯部位、インプラント周 囲炎部位、健常インプラント部位を対象に臨床データと共にプラークの採取を行なった。プラークからDNA、RNAを抽出・精製後、次世代シークエンサー(Illumina Miseq)を用いて、塩基配列の解読を行なった。現在は、取得したデータからスーパーコンピューターを用いてメタゲノム解 析、メタトランスクリプトーム解析を行なっている。 臨床的な側面からもインプラント周囲炎の治療を模式図に示した通りに進めている。治療前サンプルを採取した被験者においては段階的に治療が終了し、再評価時の臨床パラメーターの記録および細菌サンプルの採取を行っている。何名かの被験者に関しては累積的な治療が終了し、メインテナンスを行うとともにメインテナンス時の細菌サンプルの採取も行い、塩基配列の解読を行った。
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