本研究において、チタン板上で培養したラット骨芽細胞様細胞(UMR-106)はポリスチレン培養皿上培養した場合と同様にNCX1、3およびPMCA1、2を遺伝子レベル、タンパク質レベルで発現していることが明らかになった。また、チタン上のNCX1およびPMCA1、2の遺伝子発現量は、対照群であるポリスチレンディッシュ上で培養した細胞と比較して有意に上昇していた。細胞内におけるそれぞれのカルシウムイオントランスポーターの局在は、NCX1がより細胞接着面に位置し、PMCA1、2はその対側に多く位置している傾向があった。しかしながら、対照群と比較してもその局在に明らかな変化は認めなかった。チタン板上で培養した骨芽細胞は、ポリスチレン培養皿上で培養した場合と比較し石灰化能が向上すると報告されており、UMR-106でもそれが確認できた。これらの結果から、チタン上で培養したUMR-106はポリスチレン培養皿上で培養したものと比較しカルシウム沈着量が増加するが、それはNCX1およびPMCA1、2がチタン上により多く発現したため、基材上にカルシウムイオンをより多く供給したことが要因である可能性が示唆された。しかしながら、発現タンパク質と石灰化能に関しては半定量的な解析しか行っていないため、より強い根拠を示すためには定量的な解析が必要であると考える。また、今後は骨髄間葉系幹細胞を骨分化させた状態で同様の解析を行っていく。
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