研究実績の概要 |
従来より, インプラント埋入部位の診断にはCTを用いて骨密度を測定してきたが, 顎骨はその構造上, 様々な機能圧の伝達, 分散に関与するため力学的性質を変化させやすく, 骨密度の評価だけで顎骨の力学的性質を予測するには不十分である。また, CTは被曝の観点から頻回の撮影は困難であり, 骨移植材料の成熟過程における経時的な観察やその複雑な構造を評価するには不十分である。 一方で, 超音波は物質の内部構造や力学的性質の評価として物性研究で用いられている。特に, 医科で応用されている定量的超音波測定法(QUS)のパラメーターである超音波速度(SOS)は骨密度と骨質の両方に規定されている可能性が明らかとなった。 そこで申請者らはQUSに着目し, その指標の1つであるSOSが骨の力学的指標である皮質骨の骨密度(BMD),多孔率(Po)と相関することを明らかし,Peoperative Evaluation of Bone Quality Using an Ultrasound Deviceをthe 95th General Session & Exhibition of the IADR, 2017で発表後, Preoperative evaluation of bone quality for dental implantation using an ultrasound axial transmission device in an ex vivo modelとしてClinical and Experimental Dental Research(査読あり)3(3):81-86,2017に投稿を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在, 当初の計画より動物モデル作製に時間を要したこと。また、超音波による測定、CT計測にも当初の計画よりも時間を要したことから計画を変更し、補助事業期間を延長している。 しかしながら, 現在までにSOSが骨の力学的指標である皮質骨の骨密度(BMD), 多孔率(Po)と相関することを明らかにし, 海外発表および論文投稿等も行うことができた。また現在は新たな動物モデルを作製し,実際に骨の力学的性質とインプラント埋入時の埋入トルク値とが相関するのか否か、また相関した際にはどのように推測していくのかを検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに申請者らは医科で用いられているQUSに着目し, その指標の1つであるSOSが骨の力学的指標である皮質骨の骨密度(BMD), 多孔率(Po)と相関することを明らかにした。しかしながら, SOSが骨あるいは骨材の力学的性質の変化をどれだけ詳細に反映できるのか, またインプラント臨床にどれだけ応用できるか否かは未だ明らかとなっていない。 そのため平成30年ではSOSの骨質変化に対する臨床的有用性を検討するため動物モデルにウサギを用いてコントロール群と骨質低下群の2群に分けた後に動物の両側関節頭に骨窩を形成。摘出時期を4, 6, 8および12週と設定することで異なる骨質を再現し, 各時期にSOSを測定後, 関節頭を摘出する。得られた大腿骨を組織学的また力学的に比較, 検討し, SOSの骨質変化に対する有用性を明らかにする予定である。
|