研究課題/領域番号 |
16K20547
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
梶山 創太郎 鶴見大学, 歯学部, 助教 (00760414)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒト臍帯組織由来幹細胞 / ヒト骨髄細胞培養上清 |
研究実績の概要 |
再生医療には細胞(幹細胞)、足場、増殖因子(サイトカイン)という3要素による組織再生が必要である。研究代表者は新たな細胞ソースとしてヒト臍帯動・静脈周囲に存在する間葉系幹細胞Human Umbilical Cord PeriVascular cells(以下HUCPVCs)に注目している。HUCPVCsは医療廃棄物となった臍帯より採取するためドナーに新たな侵襲を加えることなく十分な細胞を確保できるメリットがある。また、免疫寛容性を有することから今後他家移植への臨床応用細胞ソースとして期待されている。本研究では臨床応用を見据えて無血清培地を用いて、新たな幹細胞ソースの生体移植細胞としての有用性について探り、新規の骨再生療法を開発することを目的とする。これまで研究でHUCPVCsをヒト骨髄幹細胞の培養上清(以下BM-CM)で培養することで骨形成が増加した。 平成29年度の研究では、ヒト臍帯組織間葉系幹細胞をより効果的に骨系へと分化させるために、最適なBM-CM採取期間について検討した。BM-CMを増殖期、コンフルエント期、石灰化期の3つの期間にわけてヒト臍帯組織間葉系幹細胞に添加した。タイムポイントは1・2・3週としてALP染色、Alizarin Red染色、遺伝子発現を評価方法とした。 BM-CMの3つの期間の検討では、コンフルエント期は増殖期と石灰化期よりもALP染色、Alizarin Red染色での陽性染色反応が明らかであり、また遺伝子発現にてRunx2もより強く発現していた。コンフルエント期のヒト骨髄細胞培養上清を用いることにより、ヒト臍帯組織間葉系幹細胞をより効果的に石灰化誘導されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究において、ヒト臍帯組織間葉系幹細胞をより効果的に骨系へと分化させるために、最適なヒト骨髄細胞培養上清採取期間についてin vitroにて検討した。BM-CMを増殖期、コンフルエント期、石灰化期の3つの期間にわけてヒト臍帯組織間葉系幹細胞に添加した結果、コンフルエント期は増殖期と石灰化期よりもALP染色、Alizarin Red染色での陽性染色反応が明らかであり、また遺伝子発現にてRunx2もより強く発現していた。コンフルエント期のヒト骨髄細胞培養上清を用いることにより、ヒト臍帯組織間葉系幹細胞をより効果的に石灰化誘導されることが示唆された。これは当初立てた仮説通りの結果であった。 このコンフルエント期のBM-CMを用いて培養したHUCPVCsを免疫不全ラット皮下移植モデルを用いて、異所性の骨形成を誘発するかについてμCTによる骨形成量の観察、H・E染色による組織学的観察を行ったが、骨形成は認められなかった。これについては予期していた結果とは異なるため、なぜそのような結果が得られたのか、について考察中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、in vitroでは早期でのHUCPVCsの変化を調べるために、タイムポイント1・2・3週としてALP assay、遺伝子発現を評価方法とし比較する。遺伝子発現についてはCol I、ALP、Osterix、Osteocalcin、BSPの硬組織関連遺伝子発現を確認する。これによりヒト臍帯組織間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化誘導時の遺伝子発現を確認する。 また、in vivoにおいてコンフルエント期のBM-CMで培養したHUCPVCsを免疫不全ラット皮下移植モデルに用いて、異所性の骨形成を誘発するかについてμCTによる骨形成量の観察、H・E染色による組織学的観察を行ったが、骨形成は認められなかったことに対して、無血清培地で分化誘導したヒト臍帯組織間葉系幹細胞を免疫不全ラット大腿骨モデルに移植し、骨形成の検討を行う。評価方法についてはμCTによる骨形成量の観察、H・E染色による組織学的観察を行う予定である。研究が当初の計画通りに進まないとき、HUCPVCsには、未分化間葉系のマーカーであるSSEA-3を有する細胞が含まれていることが知られていることから、フローサイトメトリーを用いてセレクションして培養し、分化誘導させて移植することを考えている。
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