研究実績の概要 |
歯科補綴治療において、歯槽骨のレベルおよび骨質の状態は治療方針やその成果に関わる重要な要素である。しかし、抜歯後の歯槽骨の吸収のメカニズムおよび骨再生療法を行った場合のその後の骨リモデリングへの受け渡しの機序は、未だに明らかではない。我々は、既に歯根膜を対象とした咬合性外傷に関する研究でメカニカルストレス(MS)によって線維結合性コラーゲンであるcollagen type-XII の発現が上昇し、損傷を受けた歯根膜の組織安定性に関与していることを発見している。そこで、本研究では抜歯後の損傷から回復した歯槽骨周囲歯肉におけるcollagen type X-II が骨代謝に与える影響を解析することにより、抜歯後の歯槽骨吸収のメカニズムを解明するとともに、再生療法による新生骨に対する軟組織の動態を明らかにすることを目的としている。 研究期間中は、目標達成のために研究課題および細項目を設定しており、今年度は研究課題1,"抜歯後再生した歯槽骨に対する軟組織の反応の評価"の細項目1,"マウス抜歯モデルの確立"および細項目2,"マイクロアレイによる標的分子の網羅的検索"を実施する予定であったため遂行に努めた。マウス抜歯モデルの確立に関しては、6週齢のC57/BL6マウスを用いて吸入麻酔下にて上顎右側第一臼歯を抜歯し,0,4,7,14,21日後に上顎骨をサンプルとして採取し、固定後にマイクロCTによる硬組織解析を行う群と2週間の脱灰後に組織標本を作製し,病理解析を行う群および軟組織PCR等の遺伝子解析を行う群に分け各種解析を行った。その遺伝子解析を一環として細項目2,"マイクロアレイによる標的分子の網羅的検索"を実施し、各種コラーゲン、TRPチャネル、サイトカインの発現傾向の解析に努めた。
|