研究課題
活性酸素が腫瘍血管内皮細胞の血管新生能に及ぼす影響については未だ不明な点が多い。本研究では、活性酸素種による腫瘍血管内皮細胞の血管新生能獲得機序を解明することを目的とした。今年度は以下の3点について検討した。① in vivo腫瘍血管における活性酸素の可視化法の検討:腫瘍血管に活性酸素種が蓄積されているかどうかは明らかではなかった。活性酸素種に反応することにより赤色蛍光を発するDHE試薬を用いて、in vivo腫瘍血管における活性酸素種の蓄積を可視化をした。その結果、腫瘍血管は正常血管と比較し、活性酸素種が蓄積していることが判明した。② 細胞内活性酸素量の測定法の検討:分離培養した腫瘍血管内皮細胞と正常血管内皮細胞の細胞内活性酸素量を比較するために測定法の検討を行った。DHE試薬を用いて、蛍光プレートリーダーとフローサイトメトリーで活性酸素種を検出し定量することが可能であった。次年度には、目的である分離培養した腫瘍血管内皮細胞と正常血管内皮細胞の細胞内活性酸素量を比較を行う予定である。③ 活性酸素種が腫瘍血管内皮細胞の血管新生能へ及ぼす影響の検討:血管内皮細胞に試薬を用いて活性酸素種を蓄積させ、血管新生能に及ぼす影響をBoyden chamberを用いた細胞遊走能アッセイにより検討した。結果としては正常血管内皮細胞、腫瘍血管内皮細胞ともに活性酸素種の蓄積によって遊走能の亢進が見られた。今後、活性酸素が蓄積した後のどのような変化が遊走能の亢進に寄与しているのかを解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初該当年次の研究目的である、in vivo腫瘍血管の活性酸素種の可視化、細胞内活性酸素量の測定法の確立、Boyden chamberを用いた細胞遊走能アッセイによる活性酸素種の腫瘍血管に与える影響の検討について概ね遂行することができた。
当初の予定どおり、引き続き活性酸素が腫瘍血管内皮細胞の血管新生能に及ぼす影響について検討する。今後は、遺伝子発現変動やシグナル伝達の解析、また抗酸化剤なども用いた活性酸素種の抑制の検討を行っていく予定である。並行して、遺伝子病制御研究所血管生物学のスタッフや歯学研究科口腔病理学講座のスタッフと密に連携し、実験や研究経過の検討を行っていく。
今年度は、次年度に向けて準備段階の研究内容であったため、発表を行う機会が得られなかった。そのため当初の予定より少ない支出の範囲にとどまる結果となった。
次年度は、今年度の結果を踏まえ活性酸素種が腫瘍血管内皮細胞に与える影響について解析を進めるための試薬購入費用として使用する。
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