研究実績の概要 |
前年度に、血管内皮細胞において活性酸素種がVEGFなどの血管新生に関わる遺伝子や腫瘍血管内皮細胞マーカーとされている遺伝子の発現を亢進させることが明らかとなった。その結果を受けて今年度行った結果を以下に示す。 ①活性酸素種を介した細胞内シグナル伝達の解析:血管内皮細胞に活性酸素種を誘導し、活性酸素種が細胞内シグナル伝達に及ぼす影響を、Western blotting法と細胞免疫染色法により解析した。結果としては、血管内皮細胞では活性酸素種の蓄積によりERK, NF-kBのリン酸化が起こっていることが明らかとなった。さらに、腫瘍血管内皮細胞においては、活性酸素種がSmad2/3のリン酸化を引き起こすことも明らかとなった。 ②抗酸化剤を用いた腫瘍血管内皮細胞の活性酸素種制御の検討:既存の抗酸化剤(DPI)や緑茶カテキン(EGCG)などの抗酸化物質を用いて、腫瘍血管内皮細胞の活性酸素種が除去されうるかをDHE試薬を用いてプレートリーダーおよびフローサイトメトリーにより解析した結果、DPIとEGCGのどちらにおいても活性酸素種が除去されることが明らかとなった。また、抗酸化剤により今まで解析して得た血管新生関連遺伝子、腫瘍血管内皮マーカーならびに細胞内シグナル経路へ及ぼす影響、運動能の亢進をキャンセルすることが明らかとなった。 ③in vivoにおける腫瘍血管内皮の異常性獲得と活性酸素種との因果関係の検討:担癌マウスに抗酸化剤(DPI)を投与し、腫瘍の大きさ、微小血管密度、腫瘍血管内皮細胞マーカー発現への影響などを検討した。結果としては、腫瘍の大きさについては抗酸化剤により小さくなる傾向が見られ、微小血管密度は優位に減少した。腫瘍血管マーカーについては特定のもので発言が優位に抑制された。
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