研究課題
本研究の目的は、ビスホスホネート(BP)の細胞内取り込み機序の同定、および感染による顎骨壊死発症促進機序の解明から、BP関連顎骨壊死(BRONJ)の発症機序の根本的解明・治療法の確立へと発展させることである。口腔および周辺各組織に局在する細胞内膜取り込み機序である、SLC20、SLC34に焦点を当て、検討を行った。血管内皮細胞から、SLC20およびSLC34遺伝子を、siRNAにより除去し、N-BPの細胞毒性とradio-isotope標識N-BPの取り込み量の評価を行った。その結果、siRNA処理されていない血管内皮細胞に比べ、SLC34遺伝子ノックダウン細胞株では、細胞毒性が減少し、radio-isotope標識N-BPの細胞内取り込み量も減少した。また、感染による顎骨壊死発症促進機序を解明するため、グラム陰性菌細胞壁成分のLPSと血管内皮細胞との相互作用を評価した。まず、血管及び血管内皮細胞が豊富な組織であるマウス耳介を用いて、LPSの局所的な炎症促進作用を検討した。すると、LPSはマウス耳介における炎症作用を有意に上昇させた。また、同部位におけるリン酸トランスポーターの発現も有意に上昇した。さらに、マウス血管内皮細胞において、ビスホスホネートの持つ細胞毒性、およびリン酸トランスポータ―の発現に対するLPSの影響も検討した。その結果、LPSは細胞毒性を増強させ、リン酸トランスポーターの発現を有意に上昇させた。これらの結果から、LPSは血管内皮細胞に発現するリン酸トランスポーターの発現を上昇させ、血管内皮細胞に対する細胞毒性を増強させることで、顎骨壊死発症を促進する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現時点ではおおむね予定通りに進行していると思われる。
今後は、リン酸トランスポーター遺伝子コンディショナルマウスを用いて、さらなるin vivo 実験を行い、顎骨壊死発症に対するリン酸トランスポーターおよびLPSの影響を検討する予定である。
当該年度に購入した物品が予定よりも減額されたため、次年度使用額が生じたと考えられる。
今後は、次年度に行うin vivo実験遂行のため、コンディショナルノックアウトマウス、C57/BL6 マウスを購入する予定である。
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