研究実績の概要 |
我が国において難治性疾患の1つに挙げられる進行性下顎頭吸収(Progressive Condylar Resorption: PCR)は骨格性下顎後退症に対して行う下顎骨延長術や下顎枝矢状分割術における下顎骨の前方移動などの顎矯正手術後に下顎頭が進行性に吸収する病態で, そのメカニズムについては明らかになっていないのが現状である.今回ウサギの下顎骨を一期的に前方移動し下顎頭吸収の様態に関する解析を行った.背景として関節軟骨はほとんどが水分で2型コラーゲン、アグリカン、ヒアルロン酸で構成されている. 過去にマウスの実験系において下顎頭の軟骨の分解に伴い、プロテオグリカン(PG)の喪失と細胞外マトリックス内におけるコラーゲンI型、II型、MMP13の局在の変化を認めたと報告されている. 実験動物はオスのウサギを使用し,下顎骨正中部に骨切りを行い片側を前方移動させた. 術後1週、2週、3週後に試料採取し,下顎頭前方部の形状をマイクロCTおよび病理組織学的に解析した.μCTにおいて術後2週, 3週において下顎頭前面の骨吸収を確認した. 病理組織学的検索においてTRAP染色では破骨細胞の発現はアドバンス後2週目が最も高く, 3週目はほとんど認められなかった.関節軟骨の細胞外マトリックス破壊に関わるMMP3およびMMP13について免疫染色を行ったところ両者ともに術後1週で出現し術後2週目がピークであった.軟骨の細胞外基質であるⅡ型コラーゲンについては術後1週間で正常部分に比べ前方の領域で減少を認めた.ウサギの骨延長時と同様、下顎骨前方移動モデルにおいても, 下顎頭の進行性吸収を確認した.免疫染色結果から術後1週間でMMP3および13が発現し軟骨破壊が開始され, 術後2週でX線学的にも骨吸収が確認できるようになるまで進行すると考えられた.
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