研究実績の概要 |
ASCはMSC同様、免疫応答の抑制的制御(免疫寛容)を司るT細胞の一種である制御性T細胞(Treg細胞)を発生させることにより、免疫応答の制御に重要な役割を果たすと考えている。MSCはまたFoxp3の発現を誘導することを鑑みても、ASCも同様に免疫応答を抑制する重要な要素であることが伺える。したがって、ASCの本来有する機能であろう免疫寛容を検討し、前年度までにサイトカインアッセイをによりいくつかの因子に着眼し、検証をおこなったが、影響は個体差が大きく選定因子の効果は免疫抑制の本質でないことが推測された。また、純化したASCは継代培養により、早期に増殖、分化能の低下を生じることが判明したため、分離直後の細胞確保が急務となった。これまで、使用してきた分離マーカーでは、ヘテロな細胞集団をASCとしていたため、集団内に存在する特性を有する細胞の同定をsingle cell RNA-Seqを用いて検証した。その結果、当初使用していたASC細胞集団には、遺伝学的類似性を示す細胞群が10集団存在することが判明し、網羅的な遺伝子解析により、ある細胞集団Xにおいて、免疫応答に関与する遺伝子群の発現上昇を認めた。また、この細胞を増殖能、多分化能評価したところ、MSCと同等~以上の能力を有することを確認したことから、脾細胞由来CD3陽性T細胞との共培養をLPS添加、非添加群で検討をおこなった。その結果、LPS添加群共培養によりCD3陽性T細胞のCD4,25陽性Foxp3陽性Tregの発生を有意に増加させることがわかった。この結果を踏まえ、集団XとCD3陽性T細胞間に存在するシグナルをRNA-Seqにより解析をおこなったところ、共培養により免疫応答に関与する因子のいくつかで発現上昇を認めたことから、現在さらなる検証をおこなっている。
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