本研究は、ある種の化学療法剤が使用時期や投与量によって、担癌宿主における抗腫瘍免疫反応を増強する効果を発揮するかどうかを検討するため、C3Hマウスと同マウス由来の扁平上皮癌細胞NR-S1K細胞を用いたマウス口腔癌モデルを作製し、各種の化学療法剤を低用量で複数の投与量を設定し、単独または免疫補助因子との併用投与を行い、腫瘍、腫瘍所属リンパ節など各臓器における免疫細胞の出現頻度や形質変化、機能変化に焦点を当て免疫学的解析した。現在の実績としては、腫瘍移植後3週目の口腔癌モデルマウスに化学療法剤のゲムシタビンを腹腔内に投与し、マウスから腫瘍組織、頚部リンパ節、末梢リンパ節(鼡径、腋窩)、脾臓、末梢血をそれぞれ採取し、免疫系細胞としてCD4陽性T細胞、 CD8陽性T細胞、CD19、B220陽性B細部、F4/80陽性マクロファージ、CD11c陽性樹状細胞、NK1.1陽性NK細胞、CD4、CD25、Foxp3陽性Treg、CD11b、Gr-1陽性MDSCの発現頻度を確認した。その結果、ゲムシタビン投与は、担癌マウスにおけるMDSCとB細胞の割合が有意に減少され、さらに腫瘍細胞におけるT細胞共刺激分子群であるCD80、CD86、CD40、CD54、MHC-ClassII、P-selectin、VCAM-1、ICAM-1などの発現を増強させ、それらの腫瘍細胞は、in vitroでの共培養の実験系であるMixed lymphocyte reactionで、T細胞の活性化を誘導すること、T細胞の腫瘍組織へのmigrationを促進することをTcell homing assayにより明らかとなった。以上の結果、口腔癌担癌宿主への低用量ゲムシタビンの投与は、担癌宿主における抗腫瘍免疫応答を修飾する有効な手段であることが示唆された。
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