研究課題/領域番号 |
16K20577
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高畠 清文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (70736537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハニカムTCP / 軟骨形成 / 骨形成 / 人工生体材料 / 幾何学構造 |
研究実績の概要 |
本申請課題ではハニカムTCPを用いて細胞外微小環境を再現することにより、軟骨組織および骨組織がシームレスに誘導可能な軟骨・骨組織誘導性ハイブリッド生体材料を創出し、新規関節軟骨組織再建法を開発することを目的としている。 現在までの研究により、ハニカムTCPとBMP-2を用いることで骨髄様構造を有する正常骨組織に類似した骨組織誘導を確認している。しかし、ハニカムTCPの形状とBMP-2濃度の組合せによる軟骨誘導は骨組織誘導に比べ確実性は低く、詳細は不明であった。そこで平成28年度ではハニカムTCPを用いて確実性の高い軟骨組織の特異的誘導形成を行うため、ハニカムTCPの構造、各成長因子の選定、濃度決定に取り組んだ。 ハニカムTCPの直線的貫通孔の直径が75、300、500、1600μmの4種類と、BMP-2の含有量を10、20、40、80μgの4濃度の計16の組合せを作製し、ラットに埋入、3週間後に摘出し組織学的に検討を行った。この中で、特異的に軟骨形成を認めたのは、75μmの孔径を有するTCPであり、かつBMP-2含有量が最も少ない10μgの条件であった。この条件におけるハニカムTCPを組織学的に検討を行った結果、TCP孔内を充填するようにトルイジンブルー染色にて青紫色に染色される軟骨組織の形成を認めた。 また、より確実性の高い軟骨誘導形成を行うため、軟骨組織誘導因子として用いられるTGF-β1(10、20、40、80μg)、GDF-5(10、20、40、80μg)、これらの複合投与にて各濃度系列を作製し、TCP孔内に充填、ラット筋中に埋入し組織学的検討を行った。孔径75μmのハニカムTCPにTGF-β1を10μg充填したものにおいて軟骨形成を認めたが、軟骨形成の面積は小さかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度はハニカムTCPを用いた軟骨組織誘導、軟骨誘導に及ぼす各成長因子の影響、ハニカムTCPの形状が及ぼす影響を明らかにする計画であった。孔口径75μmのハニカムTCPに10μgのBMP-2を添加することにより特異的に軟骨組織が誘導できることを明らかにした。また一般的に軟骨細胞の誘導に用いられているTGF-β1の単独添加では孔口径75μmのハニカムTCP孔内に僅かにしか軟骨組織誘導できなかった。このように軟骨組織の誘導、各成長因子の影響、ハニカムTCPの形状に関してのデータが蓄積できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨組織誘導に及ぼす各種成長因子の影響について、10μgと最も少量のBMP-2を添加した時に軟骨組織が誘導された。しかしTGF-β1単独添加ではハニカムTCP孔内に僅かしか軟骨組織形成を認めなかった。そこで平成29年度は最も低量のBMP-2にTGF-β1とGDF-5の複合添加の検討を行い、より効率的な軟骨組織誘導に及ぼす影響因子の選定を行う。以上の検討を速やかに行い、効率的な軟骨組織誘導を確認したところで、平成29年度に予定している軟骨誘導分子メカニズムの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、平成28年度は特異的軟骨形成のためのTCPの形態と各成長因子の濃度の決定を行う予定であった。これらの条件設定に若干の遅れが生じたため、TCP、試薬の購入資金に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度購入予定であった試薬に加え、平成29年度に購入予定としている試薬も購入予定としている。
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