研究課題
本申請課題ではハニカムTCPを用いて細胞外微小環境を再現することにより、軟骨組織および骨組織がシームレスに誘導可能な軟骨・骨組織誘導性ハイブリッド生体材料を創出し、新規関節軟骨組織再建法を開発することを目的としている。現在までの研究により、ハニカムTCPと80μg/mlのBMP-2を用いることで骨髄様構造を有する正常骨組織に類似した骨組織誘導を確認している。またハニカムTCPと10μg/mlのBMP-2を用いることで、特異的に軟骨形成を認めた。しかし、ハニカムTCPの形状とBMP-2濃度の組合せによる軟骨誘導は骨組織誘導に比べ確実性は低く、詳細は不明であった。そこで平成29年度ではハニカムTCPを用いて確実性の高い軟骨組織の特異的誘導形成を行うため、ハニカムTCPの構造、各成長因子の選定、濃度決定に取り組んだ。ハニカムTCPの直線的貫通孔の直径が75μmのものとBMP-2の含有量を10μg/mlのに軟骨組織誘導因子として用いられるTGF-β1(10、20、40、80μg/ml)、GDF-5(10、20、40、80μg/ml)をTCP孔内に充填して、ラット筋中に埋入し組織学的検討を行った。孔径75μmのハニカムTCPにTGF-β1を10μg充填したものにおいて軟骨形成を認めたが、軟骨形成の面積は小さかった。また軟骨形成には低酸素状態が関連していることから、TCP内形成された血管について定量的に解析を行った。その結果、軟骨形成における血管形成にはTCPの幾何学的構造が関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度はハニカムTCPを用いた軟骨組織誘導、軟骨誘導に及ぼす各成長因子の影響、ハニカムTCPの形状が及ぼす影響を明らかにする計画であった。孔径75μmのハニカムTCPに10μg/mlのBMP-2とTGF-Βを混合して添加することにより特異的に軟骨組織が誘導できることを明らかにした。また一般的に軟骨形成は低酸素条件が有利であることは知られているが、TCPの幾何学構造が軟骨再生に影響を与えることが、TCP内に形成された血管面積の解析から明らかとなった。このように軟骨組織の誘導、各成長因子の影響、ハニカムTCPの形状に関してのデータが蓄積できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
軟骨組織誘導に及ぼす各種成長因子の影響について、10μgと最も少量のBMP-2とTGF-βを添加した時に軟骨組織が誘導される結果を得た。しかし形成された軟骨面積はまだ十分ではない。そこで平成30年度は平成29年度に明らかにした軟骨誘導分子メカニズムを利用し、より効率的な軟骨組織誘導を確認する。具体的には軟骨誘導因子であるGDF-5などをさらにTCPに充填したものについての検討や、血管誘導因子に関するものをTCPに充填することにより特異的かつ効率的な軟骨形成を目指す。
平成29年度は実験計画が概ね順調に進んでおり、当初計画よりも動物実験施行数が少なくて済んだため、次年度使用が生じた。使用計画として平成30年度は、組織学的解析を進めるための免疫化学染色の抗体購入を計画している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (10件)
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