研究課題/領域番号 |
16K20579
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
吉田 祥子 岡山大学, 大学病院, 医員 (00616047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PRL-3 / 口腔扁平上皮癌 |
研究実績の概要 |
PRL-3 (protein phosphatase of regenerating liver-3)は、肝臓の再生に関与するタンパクとして同定され、細胞増殖、分化、有糸分裂周期の調整や発癌性形質転換の機能を有するとされている。これまでにPRL-3は、高分化型、および低浸潤型とされるYK分類1・2・3型の口腔扁平上皮癌組織において高発現であることを明らかにしてきた。胃癌、大腸癌、乳癌、子宮頸癌などのさまざまな癌組織において、PRL-3は不良な予後予測因子となりうると報告されているため、この結果は予想に反していた。しかし、一方でこの結果からPRL-3が癌の浸潤を抑制している可能性が示唆された。 また、PRL-3 mRNAが、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2、HSC-3、HSC-4、SAS、OSC-19において上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition: EMT)関連因子E-cadherin mRNA (CDH1)と同様の発現パターンを示すことを確認した。さらに、PRL-3とE-cadherinの関係を調べるために免疫組織化学的染色を行ったところ、PRL-3が高発現する口腔扁平上皮癌の最浸潤部では、E-cadherinも高発現する傾向にあることが明らかになった。したがって、PRL-3がEMTの抑制を介して口腔扁平上皮癌の浸潤を抑制している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PRL-3は低浸潤型の口腔扁平上皮癌組織において高発現であることを明らかにしたが、その他の業務の多忙によりIn vivoでのPRL-3の発現抑制が口腔扁平上皮癌の増殖、浸潤、転移に及ぼす影響についての検討が進んでいない。そのため、平成30年度までの延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
PRL-3がEMTの抑制を介して口腔扁平上皮癌の浸潤を抑制している可能性が考えられることから、現在PRL-3低発現のOSC-19培養系でPRL-3を一過性および長期的に過剰発現させ、またPRL-3高発現のHSC-4培養系で一過性および長期的にPRL-3をノックダウンし、E-cadherinの発現変動をreal-time RT PCR法およびWestern blot法により解析している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、その他の業務の多忙により、研究が遅れており、予定していた遺伝子導入を行っている途中である。 平成30年度は、In vitroでのtransfectantにおける細胞増殖能、malignant phenotype(浸潤能)の検討、In vivoでのtransfectantにおける増殖、浸潤、転移、分化能の検討を継続する予定である。 また、外国語論文の校閲や研究成果の投稿料と印刷費を計上する予定である。
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