研究課題/領域番号 |
16K20580
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 佐知子 広島大学, 病院(歯), 病院助教 (00632001)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞培養 / 再生医療 / 遺伝子疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝性疾患患者由来細胞から無血清培地を用いてフィーダー細胞を使用せずiPS細胞を樹立・維持し、各疾患の詳細な発症メカニズムの解明および診断・治療法の開発を行うことを目的とし、以下のとおり実施した。 1.インテグレーションフリー・フィーダー細胞フリー・無血清培養条件での疾患特異的ヒトiPS細胞誘導および幹細胞バンク化:センダイウイルスベクターを用い、顎口腔顔面領域に異常をきたす各種遺伝子疾患特異的iPS細胞を樹立した。なお、同ベクターは初期化遺伝子が同一ベクターに搭載されており、宿主細胞から排除可能であるため、ゲノムDNAへランダムな遺伝子挿入が起こらず、安全なヒトiPS細胞が樹立可能となった。現在、インテグレーションフリー・フィーダー細胞フリー・無血清培養条件にて、鎖骨頭蓋異形成症(CCD)、Turner症候群、Noonan症候群、ミトコンドリア病、Von Recklinghausen病、基底細胞母斑症候群、Cowden症候群の各患者より疾患特異的iPS細胞を樹立し凍結保存・細胞バンキングを行っている。 2.無血清培養系に樹立した疾患特異的iPS細胞を用いた特性解析:本研究において無血清培地(hESF9)で樹立されたヒトiPS細胞の特性解析を行い、各遺伝子疾患特異的iPS細胞を用いて、特定の細胞系列に分化誘導し、疾患モデルを作製した。 3.次世代シークエンサーを用いた疾患関連遺伝子解析:顎口腔顔面領域に異常をきたす各種遺伝子疾患のうち、原因遺伝子が明らかでないものにつき、次世代シークエンサーを用いて網羅的解析を行い、過去に報告のない新規変異を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
センダイウイルスを用いた無血清培養法を確立し、遺伝子疾患患者由来血液細胞から簡便にiPS細胞の樹立・維持が可能となった。また同培養方法を用いて、顎顔面領域に異常をきたす遺伝性疾患特異的iPS細胞を樹立し、GMP準拠施設内でのiPS細胞誘導および幹細胞バンク化をすすめている。特に鎖骨頭蓋異形成症、Noonan症候群、Cowden症候群、Von Recklinghausen病由来iPS細胞を用いて、それぞれ骨・軟骨細胞系統や神経系、上皮細胞系、神経系細胞へ分化誘導し、疾患モデルを作製し、責任遺伝子の発現や機能について解析中である。CRISPR/Cas9 システムによる変異遺伝子修復を行い、無血清培養条件でのiPSCからの分化・発生機構などを検討し、各疾患の疾患発生メカニズムや分化細胞での発癌機構の解明を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、センダイウイルスを用いた無血清培養法を用いて樹立した各種疾患特異的iPS細胞を用いた病態解明を行う。 1.樹立した複数例の鎖骨頭蓋異形成症(CCD)iPS細胞を用いて、遺伝子変異部位のゲノム編集をCRISPR/Cas9を用いて行い、変異部位の配列を正常化し、分化誘導時の特性解析について正常人由来iPS細胞との比較検討を行う。 2.Cowden症候群iPS細胞を用い、変異Pten遺伝子を修復し正常株と比較する。 また変異型における細胞増殖亢進やアポトーシス抵抗性、幹細胞の未分化性維持、セントロメアの不安定性、DNA修復異常等について正常型と比較し検討を行うとともに、癌化の分子メカニズムとの関連性についても詳細な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月までにCRISPR/Cas9を用いて疾患特異的iPS細胞の変異部位の配列遺伝子改変を作製していたが、樹立した各種疾患特異的iPS細胞において、全種類の疾患における改変iPS株は得られておらず一部疾患において苦渋しているため、本年度使用額に残額が生じ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は次年度繰越額を用いてCRISPR/Cas9の再設計を実施し、各種疾患特異的iPS改変株の取得を目指す。それらの作製に係る物品および消耗品に繰越額を使用し、分化誘導実験等について検討する予定である。
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