研究課題
近年、口腔扁平上皮癌(oral squamous cell carcinoma:OSCC)に対しては、手術のみならず化学療法や放射線療法を併用した集学的治療がなされており、良好な治療成績が得られている。しかしながら、局所進展例においては依然として経過が不良となる症例が多く、その理由の1つとして抗癌剤抵抗性を獲得した癌細胞の存在が考えられている。最近の研究では、局所における慢性炎症が、癌細胞の浸潤・転移能や抗癌剤抵抗性などの悪性形質獲得に関与していることが明らかになってきた。この悪性形質獲得にはインターロイキン6(interleukin-6:IL-6)などの炎症性サイトカインの関与が示唆されているが、OSCCにおけるIL-6の発現や機能については不明である。本研究では、OSCCにおけるIL-6の発現を検索するとともに、特にIL-6がOSCC細胞の抗癌剤抵抗性に与える影響について検討する。平成28年度は以下の3つの研究を行った。①OSCC細胞株におけるIL-6およびIL-6Rの発現:本研究では、OSCC細胞株であるHSC-2細胞(高分化型口底癌由来:低転移株)、SQUU-A細胞(高分化型舌癌由来:低転移株)、SQUU-B細胞(高分化型舌癌由来:高転移株)およびSQUU-B細胞から分離されたE-cadherin高発現クローン(SQUU-B-EH)と上皮間葉転換形質を有するE-cadherin低発現クローン(SQUU-B-EL)を用いた。②IL-6がOSCC細胞の増殖に与える影響:IL-6がOSCC細胞の増殖に与える影響について検討を行った。③IL-6がOSCC細胞の抗癌剤抵抗性に与える影響:抗癌剤がOSCC細胞の生存に与える影響について検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿った研究を行えた。
平成29年度は以下の2つの研究を行う。①IL-6がOSCC細胞の抗癌剤抵抗性に与える影響:IL-6がOSCC細胞の抗癌剤抵抗性に与える影響について検討を行う。抗癌剤無添加群の細胞生存率を1.0としてrhIL-6 protein添加時の細胞生存率を算出する。また抗IL-6R抗体の添加によるIL-6シグナルの阻害がOSCC細胞の抗癌剤抵抗性に与える影響について同様に検討を行う。②OSCC細胞株におけるIL-6シグナル伝達関連分子の発現rhIL-6 protein添加がIL-6シグナル伝達関連分子の発現に与える影響をWestern blotting法にて解析する。本研究では、IL-6からの主なシグナル伝達分子であるSTAT3経路以外のMAPK経路やPI3K-Akt経路も含めた詳細な解析を行う。
学会発表での使用が平成28年度はなかったから。
学会発表での使用に当てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
World Journal of Surgical Oncology
巻: 14(1) ページ: 161
10.1186/s12957-016-0918-1.
Oncology Letters
巻: 11(5) ページ: 3369-3376
10.3892/ol.2016.4411