研究課題
粘膜類天疱瘡(MMP)は自己免疫性水疱症の一つであり、口腔粘膜をはじめとする粘膜組織に優位に発症する。同疾患では、他の類天疱瘡と同じく表皮真皮間結合部(ヘミデスモソーム)に自己抗体が沈着し、同部の結合が障害され水疱を生じる。しかしながら、明確な標的抗原は明らかでなく、また粘膜に好発するメカニズムも不明のままである。これまでMMPとの関連性が指摘されているヘミデスモソーム構成タンパクの一つであるBP180タンパクのC末端部領域に着目し、同抗原と本疾患との関連性を明らかにしてきた。本研究ではBP180C末端部 ELISAを用いて各患者血清のIgA自己抗体発現の有無を検討した。その結果、MMP患者血清中にBP180C末端部に対するIgA自己抗体を検出し、その検出率は他の自己免疫性水疱症よりも高い傾向であった。これらのことからMMPの診断においてはIgG自己抗体だけでなくIgA自己抗体を検索する必要性があること、またMMPの病態にIgAが関与する可能性が示唆された。一方で、MMPの病態解明のために、口腔扁平上皮癌細胞株を用いてin vitroにおけるヘミデスモソームの構築を試みた。まず当研究室で保有している同一患者由来の舌扁平上皮癌細胞株であるSQUU-A、SQUU-Bを用い、BP180の発現量についてリアルタイムPCR法およびウェスタンブロット法を用いて検討した。その結果、低転移型であるSQUU-AにはBP180発現を認めたが、高転移型であるSQUU-BにはBP180の発現をほとんど認めなかった。そこでin vitroの実験系で浸潤能について検討したところ、SQUU-Bの浸潤能はSQUU-Aより明らかに高かった。これらの結果からBP180が癌細胞の転移・浸潤能に深く関わっていることが示唆された。
3: やや遅れている
本研究課題遂行にあたってin vitroにおけるヘミデスモソーム構築を試みるため複数の口腔癌細胞株を用いたところ、口腔癌細胞株の種類によってBP180の発現量が異なっていることが明らかとなった。新たな実験を追加し、BP180と癌の転移・浸潤能への関与を追究したため、当初の研究計画については若干遅れている。
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Acta Derm.-Venereol.
巻: 96 ページ: 762-7
10.2340/00015555-2407.
巻: 96 ページ: 748-53
10.2340/00015555-2379.