研究実績の概要 |
類天疱瘡群は、表皮真皮間結合部の接着機構であるヘミデスモソームを構成する分子に対する自己抗体が生じることにより表皮下水疱を生じる自己免疫性水疱症疾患であるが、その自己抗体の標的抗原は多彩であり、具体的な疾患発症に関わる責任抗原は明確となっていない。そのため、臨床診断は従来通り、臨床所見をふまえ、血清学的、病理学的所見から総合的に行わなければならない。 本研究は、標的抗原候補の中でも、特にBP180に着目した研究が遂行された。病態解明に結びつくBP180の機能解析の進捗が滞っている理由に、BP180の発現制御機構やそのリガンドが解明されていないことが挙げられる。そのため、まず当該遺伝子(蛋白質)の発現制御と類天疱瘡の病態形成との関わりについて、臨床検体を用いて解析することから着手した。その解析の中で、類天疱瘡における基底膜構造の解離様式が、癌浸潤でみられる様式と類似していることが見出されたことから、BP180の局在とその存在意義、さらには、類天疱瘡と口腔癌発症の関連性についても解析を行った。 特に、口腔癌(歯肉癌、舌癌)細胞および組織検体、および正常舌組織を用いたin vitroにおけるBP180の発現制御解析では、BP180発現制御には、miR-203がp53非依存的に関与していることを突き止め、BP180、野生型p53、変異型p53、miR203の連関と発現制御の相互性をin vitroで詳細に解析した(Yasukochi A et al., J Biochem, 2019, in press)。 本研究によって明らかとなった、新規のBP180発現制御機構は、ヘミデスモソームの解離が病態の主体である類天疱瘡のほか、癌浸潤機構や創傷治癒機転の解明にもつながり、様々な疾患に対する新たな治療標的を提示した。
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