骨再建において脂肪由来間葉系幹細胞 (ASCs) を用いることは、感染に強く侵襲の少ない新たな方法として注目されている。ASCs の骨形成分化の促進には、骨形成因子 (BMP-2) が有用であると提唱されているが、リコンビナント BMP-2 (rBMP-2) は生産性、コスト面からその臨床応用は限定的である。私たちは以前の研究で、線維芽細胞への Ca2+ 刺激により BMP-2 が産生されることを示した。その結果を踏まえ、本研究では、ヒト ASCs (hASCs) における細胞外 Ca2+ の影響を検討することにより、BMP-2 によらない細胞外 Ca2+ のみを利用する hASCs の骨再生の可能性を探り、臨床応用へ展開していくことを目的とする。 私たちはこれまでに、細胞外 Ca2+ 濃度を上昇させるとhASCsの石灰化が促進されることを確認した。また、高い細胞外 Ca2+ 濃度では rhBMP-2 存在下での反応と同様に骨関連蛋白の発現が増強した。細胞外 Ca2+ 濃度を上昇させることで Calcium sensing receptor (CaSR) は活性化され、BMP-2 の産生が増加していることが示された。この BMP-2発現増強には Ca / calmodulin / NFAT 経路が関与していることが示唆された。 このことから、細胞外 Ca2+ の増加は、autocrine および/または paracrine によって作用し、hASCs の骨形成分化を誘導する可能性が示された。これは、in vitroにおいて Ca2+ の投与が、hASCs の骨形成分化を誘導するための BMP-2 の代替法または補助法であることを示唆している。
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