研究実績の概要 |
本研究では、CD82の癌転移抑制機構のさらなる検討と癌細胞におけるCD82発現のコントロールについてmiRNAに注目して行い、miRNAを利用した口腔癌の診断・治療法に展開することを目的とした。 h1299細胞へのCD82遺伝子導入により、FZD2,3,5,7,9においてmiR203とmiR338が特異的に発現した。CD82低発現細胞にmiR-203 mimicを導入すると、mRNAおよびタンパクレベルでのFZD2の発現と、細胞遊走能が低下した。CD82高発現細胞にmir-203 inhibitorを導入すると、FZD2の発現と細胞遊走能が亢進した。一方miR-338-3pの導入により、FZDの発現にも細胞遊走能にも変化は認めなかった。以上よりCD82はmiR-203の発現を亢進させ、FZD2の発現を抑制し、Wntシグナル経路の制御を介して癌の浸潤転移を抑制することが示唆された。 最終年度には、口腔扁平上皮癌への腫瘍マーカーとしてのmiRNAの有用性を検討するため、OSCC患者群の血清より作製した血清プール中のmiRNAと、健常者群の血清より作製した血清プール中のmiRNAをmiRNA microarrayにて比較検討した結果、miR-125bとmiR-183を腫瘍マーカーの候補として選択した。OSCC患者群と健常者群の各血清中でのこれらの発現をリアルタイムPCR法で定量解析を行ったところ、miR-125bでは患者群で発現低下を認め、miR-183では患者群で発現亢進を認めた。ROC解析を行ったところ、miR-125b、miR-183共に高いAUCを示したことから、OSCCの腫瘍マーカーとして有用であると考えられた。さらに同一患者での術前と術後半年の発現量を比較すると、miR-183では術後に発現が低下する傾向を認めたことから、術後のモニタリングとして有用であると考えられた。
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