研究課題/領域番号 |
16K20596
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
渕上 貴央 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (40772439)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | エナメル上皮腫 / 歯原性腫瘍 / 間質線維芽細胞 / 3次元培養 / 集団的細胞浸潤 |
研究実績の概要 |
Double Layered Collagen Gel Hemisphere 培養法(DL-CGH法)を用いた3次元培養実験系を応用し研究を進めた。エナメル上皮腫は複数の組織型に分類される歯原性腫瘍である。いずれの組織型も腫瘍細胞の集団的細胞浸潤が特徴的であるが、その浸潤形態の違いを生む細胞生物学的な要因は不明である。我々は異なる組織型のエナメル上皮腫細胞株AM-1(叢状型)とAM-3(濾胞型)を有しており、まずこれらの細胞の集団的浸潤形態を比較評価するため、腫瘍細胞単独でのDL-CGH法を行った。その結果、異なる腫瘍型由来のエナメル上皮腫細胞株であるAM-1とAM-3では異なる細胞浸潤形態を示すことが分かった。すなわち、叢状型由来のAM-1は叢状の浸潤形態を示し、AM-3は平滑な浸潤辺縁を保ったまま緩徐な浸潤を示した。さらに、エナメル上皮腫細胞集団の周囲を線維芽細胞を含んだコラーゲンゲルでコーティングすると、腫瘍細胞集団の浸潤形態は著明に変化した。特にAM-3では、AM-3単独では細胞間接着を保ったまま平滑な浸潤辺縁を維持し浸潤したのに対し、線維芽細胞存在下では複数の腫瘍細胞が細胞間接着を維持したまま浸潤突起を顕著に形成し、積極的に周囲に浸潤する様子が伺えた。また、その浸潤突起の先端には線維芽細胞が存在し、腫瘍細胞の形成する浸潤突起の浸潤を誘導する様子が認められた。さらに別の培養方法として、腫瘍細胞と線維芽細胞を混合してDL-CGH法による培養を行った所、AM-1、AM-3共に、細胞集団の中心部ではそれぞれ叢状型、濾胞型に近い顕微鏡像が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に構築した3次元培養法により、エナメル上皮腫細胞の集団的細胞浸潤を評価するシステムを既に構築し、ある程度の知見を得ることができた。現在、H28年度の結果を論文にまとめており、早い段階で英文雑誌への投稿を試みる。それと併せ、H28年度の結果の原因となる因子について同定を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度の結果より、エナメル上皮腫の集団的浸潤形態には元来の腫瘍細胞の特性だけでなく、腫瘍細胞周囲の線維芽細胞の存在も影響することが示された。特に、線維芽細胞の存在はエナメル上皮腫との間の相互作用を引き起こし、その相互作用がエナメル上皮腫細胞の集団的細胞浸潤形態に与えることが分かった。今後は、このような集団的細胞浸潤形態の違いを生む因子について、より詳細な解析を進める。そのためには我々が上記因子の候補として挙げている複数の因子に対する抗体や、同因子をノックダウンさせた腫瘍細胞などを用い、引き続きDL-CGH法による3次元培養を続ける。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に論文投稿する計画であったが、若干予定がずれ込み、論文投稿にかかる費用の支出がされなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
既に論文投稿1編の準備が整っており、繰越金を投稿費として使用する予定である。
|