研究課題
口腔外科領域の手術の合併症である末梢神経障害の治療法は未だに確立されていない。近年、細胞から分泌されるエクソソームが核酸やタンパク質を内包し、様々な生命現象に関与するため、多くの研究分野で大きな注目を集めている。なかでも歯髄幹細胞由来のエクソソーム(DP-Exo)は、抗炎症効果等を有することが報告されている。我々は、このDP-Exoと多糖ナノゲルを併用することですることで、末梢神経障害に対する新規ドラッグデリバリーシステムの開発を目指す。
2: おおむね順調に進展している
口腔外科領域の手術の合併症である末梢神経障害の治療法は未だに確立されていない。歯科分野での神経損傷は、腫瘍切除・嚢胞摘出、抜歯やインプラント埋入術で偶発症で起こり得る。下顎神経の損傷により、知覚麻痺や炎症に伴う神経因性の疼痛が引き起こされQOLに大きな影響を与える。これらの治療法に、末梢神経を標的とした薬物療法やレーザー療法、自家神経移植等があるが、まだ確立されていない。歯髄幹細胞(DPSC)は末梢神経損傷ラットモデルにおいる、損傷部への移植は、末梢神経の再生を促すと報告されている。しかしながら、幹細胞移植の実用化は安全性が確立されておらず、法規制、費用、GMPに準拠した細胞プロセッシングセンターの設置など解決すべき課題多い。近年、エクソソームと呼ばれる細胞外小胞が注目されている。エクソソームは、直径100nm 程度の小胞であり、他の細胞へ運ぶ細胞間コミュニケーションを司る。DPSCの培養上清中のエクソソーム(DP-Exo)は、再生効果を抗炎症効果を有することが報告されている。DP-Exo投与は歯髄幹細胞移植と同様の効果が期待され、細胞を移植するよりも安全だと考えられる。また、DP- Exoは抗炎症効果を有することから、神経損傷部位の炎症応答の増悪を引き起こす好中球やマクロファージの活性化を阻害することで、神経性の疼痛に対しても治療効果が期待できる。申請者等はDPSCがエクソソームを超遠心法で単離した。その結果、DPSCは、血球系細胞以上にエクソソームを分泌することを確認した。DP-ExoはWST-8アッセイにおいてヒトグリア細胞の増殖を促進し、アネキシンアッセイにおいて抗アポトーシス効果を有することを確認した。初年度はDP-Exoの採取方法の最適条件を検討するのに時間を要したため、当初目標としていた「ナノゲルとDP-Exoの併用」についての検討が出来なかった。
申請者等は歯髄幹細胞がエクソソーム(DP-Exo)を神経系の細胞に有益な効果を及ぼすことを確認している。DP-Exoを多糖由来の担体であるナノゲルと併用することで、相乗効果を期待する。最終的には、DP-Exoとナノゲル複合体を、神経損傷モデルに移植し、その効果を検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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