研究課題/領域番号 |
16K20604
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
柳生 貴裕 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (00555550)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
ドラッグデリバリーシステム(DDS)を用い、ハイドロゼラチンに各種成長因子(bFGF, PDGFなど)を複合化させる技術をin vitroで確立し、約7日間にわたり成長因子を徐放させることが可能になった。特にbFGFは良好な結果を示し、in vitro実験により最適なbFGF濃度やゼラチン濃度の検証を行うことができた。次に、同材料のin vivoでの骨再生への影響を調べるためラット下顎骨欠損モデルを用いて検討を行った。骨欠損はラット下顎臼歯を抜歯後に規格化したフィッシャーバーで骨削除し作製した。その骨欠損部に実験材料を填入し創部を閉鎖創にし、材料填入後の骨欠損の変化を経時的に観察した。コントロール群は抜歯窩に何も填入せず閉鎖創にした。定性評価は組織学的、マイクロCTによるエックス線学的に行った。組織学的検査では実験群は骨欠損部に骨再生を認め、同部位の被覆粘膜は良好な治癒を認めた。一方、コントロール群では骨形成はみられず、同部位の被覆粘膜は治癒が遷延し、潰瘍形成を示すものもみられた。さらに壊死骨形成や著明な炎症細胞浸潤を伴っていた。エックス線学的検査でも組織学的検査と同様に、実験群は旺盛な骨形成を認め、骨欠損が完全に新生骨で置換されている症例もみられたが、コントロール群でははっきりとした骨形成はみられず、腐骨と思われる不透過像を伴う症例もみられた。マイクロCT画像を定量評価してところ、実験群では経時的に骨再生が進行する傾向が確認できたが、十分なN数が得られず統計学的処理は行えていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は動物モデルにて骨形成細胞シートによる顎裂治療の可能性を経時的に検証する予定であったが思わしい結果が得られなかった。そのため、他の再生医学的 なアプローチによる顎裂治療の可能性について検証を行ったところ、成長因子を用いた手法にて良好な成果が得られた。介入方法の検討に時間を要したため、当初の予定より進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予期していなかった方法ではあるものの、徐放製剤であるハイドロゲルと成長因子を用いた手法による顎骨再生の可能性を見出すことができた。引き続きモデル動物を用いたin vivo研究を行い、同手法の有効性、安全性の検証を行う予定である。再生医学的アプローチを用いることで自家骨移植に寄らない低侵襲な顎裂治療法の開発に向けて研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの解析に想定以上の時間がかかり、ラットへの埋入実験の開始が遅れることなった。そのため期間内に研究を終了することができなかった。次年度では予定匹数の動物実験を行い、解析まで終了する予定である。
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