研究実績の概要 |
IL-17による炎症性関節破壊に対する修飾作用の検証に先行して、アクチビン単独の骨軟骨代謝に及ぼす影響を検討した。 まず、軟骨細胞の分化に関して、アクチビンの添加により、マウス前軟骨細胞株ATDC5の軟骨分化が抑制されることを見出した。さらに、その分子メカニズムとして、細胞内シグナルタンパクであるExtracellular Signal-regulated Kinase(ERK)の活性化阻害とPhosphoinositide 3-kinase(PI3K)/Aktの活性化亢進の両者が関与していることが見出された。 一方で、破骨細胞の分化に関して、破骨細胞分化因子(receptor activator of NF-κB ligand; RANKL)により誘導される破骨細胞分化やアクチンリング形成、および骨吸収活性は、アクチビンにより有意に亢進することが見出された。同様に、破骨細胞の分化マーカーであるcathepsin K、osteoclast stimulatory transmembrane protein (OC-STAMP)、matrix metalloproteinase-9 (MMP9)遺伝子のRANKLによる発現誘導もアクチビンの添加により亢進した。 このアクチビンによる破骨細胞分化の正の制御に関する分子メカニズムについて、検討したところ、アクチビンは破骨細胞前駆細胞上の受容体との結合を介して、細胞内シグナルタンパクsmad2/3を活性化し、smad2/3とc-fosの会合を誘導することを見出した。その結果、smad2/3とc-fosの相互作用により、破骨細胞分化のマスター転写因子であるNuclear factor of activated T-cells, cytoplasmic 1 (NFATc1)の発現が亢進することを証明した。 以上から、アクチビンは骨・軟骨分化の修飾能を有することが強く示唆された。今後、IL-17存在下の炎症性関節破壊モデルに対する検討を行い、関節リウマチや変形性関節症におけるアクチビンの生物学的機能について検証を加えたい。
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