研究課題/領域番号 |
16K20607
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
山下 雅子 自治医科大学, 医学部, 臨床助教 (70569946)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ストレス / 咀嚼 / pERK |
研究実績の概要 |
これまでに、摂食することで、延髄のプロラクチン放出ペプチド産生ニューロンが活性化され、視床下部ではオキシトシン産生ニューロンが活性化し、摂食が終了するということが報告されている。また、近年では、オキシトシンにはストレス緩和作用があることが報告されている。一方、ストレス負荷と同時に、咀嚼を活性化することで、ストレスに対する全身性および脳内応答領域の反応が抑制して働くことが明らかとなってきている。 そこで、本研究では、ストレス環境下における咀嚼器官の活性化は、視床下部をはじめとして脳内の特定部位が活性化することで、ストレス反応を緩和する という仮説を構築した。 実際には、咀嚼をすることによりストレスが緩和される動物実験モデルを用いて、ストレス下における咀嚼器官が活性化することで、ストレス反応が緩和されているかという仮説を検証する実験を行った。拘束ストレス負荷時において咀嚼させることで血漿コルチコステロン濃度は有意に抑制されていることが明らかとなった。同様に拘束ストレス環境下で咀嚼させることで、ストレス反応を受けて活性化するマーカーの分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼであるリン酸化細胞外シグナル調節キナーゼ(pERK)の発現が島皮質と中脳中心灰白質において有意に減少していた。これまでに、拘束ストレス負荷時の酸素分圧が増加され、視床下部と扁桃体においては血流量が増加することが明らかとした。拘束ストレス負荷時に咀嚼刺激をさせることによって視床下部の室傍核でもpERKは有意に減少することを明らかとした。 以上の結果より、咀嚼することで、脳内の血流が増加し、その結果、視床下部の室傍核は活性化され、島皮質や中脳中心灰白質の脳領域と視床下部とを共有し抗ストレス作用として関与しているということが検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はストレス環境の拘束ストレス負荷において咀嚼させ、酸素分圧は増加、視床下部と扁桃体において血流量が増加することが明らかとした。 続いて、咀嚼をさせない実験モデルではどのような影響を及ぼすのか検証する予定であった。咀嚼させない実験モデルとして考えた胃瘻増設モデルの設立が難しく、実験モデルの作成に時間がかかったことから遅れが生じた。実験モデル作成に時間がかったことから、並行して、拘束ストレス環境下で咀嚼させ、ストレス反応を受けて活性化するマーカーの分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼの発現実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は咀嚼や摂食刺激がオキシトシンに関わることでストレス緩和作用を持つかを検証する実験を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験の殆どが実験モデルの作成に時間を費やしており、モデル作成にしか使用しておらず、余りが出た。本年度末より、新たにストレス反応を受けて活性化するマーカーの発現の実験を構築したことから次年度では、既存の実験モデルの構築とその実験、および、マーカーの発現実験をすることに使用する予定である。
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