研究課題/領域番号 |
16K20611
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
木内 誠 獨協医科大学, 医学部, 助教 (00759483)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | microRNA / Patient-Derived-Modelマウス / 口腔癌 / liquid biopsy |
研究実績の概要 |
昨今,様々な癌におけるmicroRNA(miRNA)の重要性が着目され,患者血中の遊離miRNAを標的としたliquid biopsyの報告が散見される.口腔癌は視診で診断可能な場所に発生するため,liquid biopsyは転移診断に有用であると考えられる.しかしながら,患者血清を用いた解析は,患者の基礎疾患や採血時の癌の進展度がバイアスになり,癌の個性を反映しない可能性がある.近年,患者由来癌組織をマウスに移植したPatient-Derived Xenograft(PDX)モデルが報告された.本モデルは,腫瘍本来の性質を維持したままの組織の継代が可能であり,担癌マウスの血液中には腫瘍自身が産生する純粋な遊離miRNAを含むことが予想される.そこで本研究では,口腔癌におけるPDXモデルを確立し,本モデルの血中miRNAを解析することで,診断治療に有用な口腔癌の新規転移マーカーを同定することを目的とした.まず,先行研究として分泌型miRNAとして報告のある,miR-518c-5pに着目して実験を行った.当科で保有する口腔扁平上皮癌細胞株であるCAL27細胞にmiR-518c-5pの強制発現株を樹立後,分泌されたmiRNAを含んでいると考えられるその培養上澄を用いて各種研究を行った.その結果,強制発現株のコンディションドメディウムはリンパ管内皮細胞の増殖能を有意に亢進し,さらには細胞遊走能も有意に亢進させた.これにより,PDXモデルマウスを樹立した際に,マウス血清から転移マーカーとしての分泌型miRNAを同定するのと同時に,腫瘍周囲の癌微小環境について病理組織学的検討を行うことができると考えたからである.また,患者癌組織をマウス背部皮下に移植し,PDXモデルマウスを樹立すべく研究を継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分泌型microRNAとして報告されているmiR-518c-5pが強制発現株として樹立した培養細胞から実際に分泌されているかどうか,さらにその分泌されたmicroRNAが癌周囲微小環境,具体的にはリンパ管内皮細胞に対してどのような影響をおよぼすのか先行研究を行った.これにより,PDXモデルマウスを樹立した際に,マウス血清から分泌型miRNAを同定するのと同時に,腫瘍周囲の癌微小環境について病理組織学的に検討を行うことができると考えたからである.この先行研究を行った後に,現在はPDXモデルマウスを樹立すべく,患者由来組織を用いてをマウスの口底,舌根部,背部皮下へ移植を順次継続している.しかしながらサンプル数が少なく,順調に移植ができていない状況であり,現在最適な移植部位,およびサンプルの処理法について検討を行っている段階である.今後も継続して移植を行いマウスモデルの樹立行い,以後の実験を継続予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定に加え,上記先行研究に時間がかかってしまったこと,またPDXモデルマウスの樹立を現在行っている段階であるがサンプル数が少ないこと,サンプルの最適な処理法の検討に時間を要しており,研究に遅れが生じている.今後は,サンプルの取得からマウスへの移植までの時間を最短にすべく,プロトコールの改善を行う予定である.現在他の癌腫でもマウスへの移植を行うことにより各種研究が行われていることから,より正確により確実にマウスモデルを樹立できるよう文献の収集も行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりも遅れが生じているため.今後は,PDXモデルマウスの樹立のため購入するマウスの頭数の増加が見込まれる.さらに,転移マーカーとしての分泌型miRNA同定のため,複数回のマイクロアレイ実施を見込んでいる.さらには,マイクロアレイで転移マーカーとしての可能性を持った各種miRNAについて,その再現性を確認すべく,in vitro,in vivoでの実験を行う予定であるためそれらの費用として使用予定である.
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