研究課題
【目的】侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛の発生や調節に,細胞外ヌクレオチド(ATP)とその受容体であるATP受容体を介したシグナル伝達の関連が示唆されている.ATP受容体はP2X受容体とP2Y受容体に大別され,それぞれサブタイプが存在する.なかでもP2X7受容体は他のP2Xサブタイプと比較し,活性化に高濃度のATPが必要で,巨大なチャネルポアを形成することから,疼痛メカニズムの一端を担う可能性が示唆されている.我々は,ラット三叉神経節由来の神経細胞とグリア細胞のP2X7受容体の機能検索を行い、それらの細胞間相互作用を検討した.【方法】本研究は東京歯科大学動物実験委員会の承認を得た(承認番号292502).ペントバルビタール麻酔下に新生仔Wistarラットの三叉神経節を急性単離し,初代培養を行った.培養細胞には神経細胞とグリア細胞が共存している.Whole-cell patch clamp法を用いて,Na+電流が発生した細胞を神経細胞,発生しなかった細胞をグリア細胞と同定した.試薬にはP2X7受容体のアゴニストであるBz-ATPと,アンタゴニストであるA-740003を用いた.【結果】神経細胞とグリア細胞はBz-ATPにより2相性の内向き電流を示し,Bz-ATPの連続投与でその誘発電流密度は減少し,脱感作現象を示した.両細胞におけるBz-ATPによる内向き電流はA-740003により有意に抑制された.Bz-ATPによる内向き電流の減衰時定数は,神経細胞と比較しグリア細胞で有意に延長した.単一細胞に対する細胞膜伸展機械刺激法では,両細胞間に直接的な相互作用は認めなかった.【考察】アゴニスト感受性,減衰時定数の違いから,三叉神経節における神経細胞とグリア細胞に発現するP2X7受容体は,機能的差異があると考えられたが,直接的な細胞間相互作用は認めなかった.
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日本歯科麻酔学会雑誌
巻: 46 ページ: 37-39
https://doi.org/10.24569/jjdsa.46.1_37