研究実績の概要 |
現在までに口腔がん診療において臨床応用されている個別化治療バイオマーカーはない。そこで組織マイクロアレイを用いて候補分子を探索し、実臨床に応用可能なバイオマーカーを発見することを目的に本研究をおこなった。これまでに臨床病理学的データ・予後データを搭載した口腔がん組織マイクロアレイを作成した。アクチン関連タンパク質を網羅的に免疫染色し、個別化治療バイオマーカーとなる可能性がある分子を同定した。続いて組織切片を用いて染色の局在やintratumoral heterogeneityを評価するとともに再現性試験をおこなった。 候補分子は腫瘍の浸潤先進部に強く染色することが明らかとなった。さらに候補分子の発現と頸部リンパ節転移との関連が示唆された。年齢、性別といった臨床的因子に加え,病理組織学的因子である脈管浸潤,リンパ管浸潤,Stage,YK分類、組織学的異型度(Grade分類)との関連はみられなかった.一方、候補分子陽性群が陰性群に比べ後発頸部リンパ節転移が有意に多かった(P<0.05, Fisher’s exact test)。候補分子と後発頸部リンパ節転移との間に相関がみられた。 Kaplan-Meier analysisで候補分子発現陽性群と陰性群の間に全生存率(OS)の有意な差は見られなかった。しかし,無病生存率(DFS)では陽性群で有意な低下がみられた.(P<0.01, log rank test) 以上の結果を論文として海外学術雑誌へ投稿した。 さらに各アクチン関連タンパク質の発現を組み合わせることでより厳密に予後予測できることが明らかになり学会発表をおこなった。
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