唾液分泌や睡眠覚醒など多くの生理機能は約24時間周期の概日リズムを示します。近年、概日リズムの概念を取り入れた投薬時刻決定など時間医学の考え方が広まっており、不規則な生活習慣は睡眠障害のみならず肥満や口腔疾患の原因にもなります。概日リズムは、細胞内で自律的に振動する時計遺伝子やタンパク質のリズムが器官、個体として統合されることにより形成されます。 夜型の生活習慣など生活リズムの乱れが炎症に及ぼす影響を検討することを将来的な目標とし、炎症時に上昇する細胞内c-Jun N-terminal kinase (JNK) 活性をFörster resonance energy transfer (FRET)を利用した蛍光バイオセンサーにて定量した。FRETとは2種の蛍光タンパク質が近接した際に起こる分子間のエネルギー移動現象である。JNKが活性化すると立体構造が変化しFRETが起こるように設計されたバイオセンサーを野生型および時計遺伝子Bmal1欠失NIH-3T3細胞に遺伝子導入、細胞を蛍光顕微鏡にて生きたまま観察しFRETを評価した。デキサメタゾン処理によりディッシュ内の細胞のリズムを同期させ、処理16時間後から40時間後まで4時間おきに蛍光観察した。観察中にアニソマイシンあるいはリポ多糖を投与し、投与前後の画像を解析しFRETの変化を評価した。JNKはいずれの薬剤の投与によっても約10分後に活性が上昇した。野生型細胞の活性上昇量は32時間後をピークとする時刻依存性を示したが、Bmal1欠失細胞は時刻依存性を示さなかった。本研究結果よりJNKは時刻依存的に反応性が変化し、時計遺伝子リズムが反応性リズムに影響することが示唆された。
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