研究課題/領域番号 |
16K20629
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中西 康 北海道大学, 大学病院, 医員 (00754863)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯科矯正用接着剤 / ナノ多孔性シリカ / グラスアイオノマーセメント |
研究実績の概要 |
本報告では、製品開発に差し障りのないと考えられる予備検討の結果を中心にまとめる。 薬剤徐放作用を持つ新規歯科矯正用接着材開発のためのモデル実験として、様々な分子やイオンを取り込むと言われているナノ多孔性シリカ(NPS)を作製し、グラスアイオノマーセメント(GIC)に添加し、電荷の異なる色素の取り込みと放出量を評価した。陽イオン性色素にはローダミンB、陰イオン性色素にはローズベンガル、電荷のない色素にはフルオレセインを用いた。まず、1wt%濃度の色素水溶液を作製しNPS添加GICを24時間浸漬させた。その後、取り出し、洗浄、乾燥させ、蒸留水に24時間浸漬させた。浸漬後、取り出し再度新しい蒸留水に浸漬させた。これを3週間繰り返し、浸漬液から色素の放出量を視覚的、さらに紫外可視分光法を用いて検討した。その結果、ローズベンガル、フルオレセインでは3日目でほぼ放出がなくなったことに対し、カチオン性色素である、ローダミンBでは徐々に放出量は低下していったが、2週間以上に及ぶ色素の放出が見られた。作製したNPSは優れた陽イオンの取り込み、放出能を持つことがわかった。また紫外可視分光法による色素放出量の評価は薬剤の放出量の評価へ応用が可能であり、新規歯科矯正用接着材開発に向けて薬剤徐放量を検討するための方法が確立することができた。 本研究の成果は産学連携事業への展開中であり,製品上市を視野に入れた開発も連携企業で着手された。よって,製品開発やそれに伴う特許出願の妨げとなり得る内容は,本報告書から割愛する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
製品開発やそれに伴う特許出願の妨げとなり得る内容は割愛するが、今年度中に計画していた薬剤徐放性歯科矯正用接着材の作製は順調に進んでおり、新規接着材からの薬剤の徐放量の検討についてはモデル実験と同様の方法で、評価することができた。また、来年度に予定していた抗菌作用の評価にまで着手することができているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の予定通り、薬剤徐放性歯科矯正用接着材の抗菌作用の評価、接着強さの評価を行っていく予定である。 抗菌作用の評価では、最も病原性の高い齲蝕原因菌であるStreptococcus mutansを用いて、培養液の濁度測定や寒天培地上でのコロニー数により、抗菌作用を評価する予定である。 接着強さの評価では、牛歯とリンガルボタンを使い、剪断強さを測定することで評価する予定である。 上記を行っていくうえで、新規接着材の作製法に改良が必要であれば随時行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新規歯科矯正用接着剤の調整に多くの費用を使う予定であったが、比較的順調に合成が進んだため、費用があまりかからなかった。また薬剤徐放量の評価については、研究室にある器材を用いたためこれについてもあまり費用がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度から抗菌作用の評価、接着試験の評価を主に行っていくため、培養する菌や培養における消耗品、接着試験を行うための牛歯、リンガルボタンなどの購入に費用をあてる。また、得られた成果は精力的に学術論文や学会にて発表していく予定であるためその費用にあてる。
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