研究課題/領域番号 |
16K20631
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
成瀬 正啓 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医師 (00756273)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞分化 / 歯の発生 / 小分子化合物 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
近年の再生医学の進展により、様々な組織や器官の再生が可能となってきた。歯の再生に関しては、器官原基法の応用をはじめ、iPS細胞からエナメル芽細胞の人工誘導に成功したという報告や象牙芽細胞について、乳歯由来歯髄細胞から小分子化合物を用い、歯髄幹細胞を人工誘導する技術開発が進んだ。これらの成果により、歯を構成する細胞ソースの問題は解決に近づいたが、個別の細胞に誘導する為には、他の細胞との共培養や異種生物から作成した増殖因子等の蛋白成分を用いる必要があり、これらの分化誘導過程において異種由来の成分の混在についても解決すべき問題として残っている。歯の発生に関して神経栄養因子の一つであるNeurotrophin 4(NT-4)が歯原性上皮細胞においてTrkB受容体を介してその増殖を抑制、分化を促進し、iPS細胞からエナメル芽細胞に分化誘導させる際にも、異種由来の歯原性上皮との共培養を応用するが、この際にもNT-4が必須の分子であることが報告されている。そこで、NT-4の細胞受容体であるTrkBに特異的に作用する小分子化合物であるLM22A-4、さらにTrkB受容体シグナルの阻害剤である小分子化合物を用いることで、歯原性上皮細胞の分化の制御を異種成分が含まれない状態(Xeno-free)でできるのではないかと考えた。本研究結果により、歯原性上皮細胞株にLM22A-4を添加して培養すると、リコンビナントNT-4を用いた場合と同程度にameloblastin,amelogenin,enamelinなどのエナメル芽細胞分化マーカー遺伝群の発現上昇が認められた。この結果をふまえ、今後Xeno-free培養下での歯原性細胞の安定的供給とエナメル芽細胞分化誘導を目的とし、細胞増殖および分化誘導作用を保持する複数の小分子化合物を組み合わせた、新規の細胞増殖・分化制御培養法の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属研究機関変更により、当初予定していた以上に研究環境整備に時間がかかってしまい、研究が予定より進行しなかった期間が生じた。 歯原性上皮細胞株、歯原性間葉細胞株を用いた小分子化合物が遺伝子発現に与える変化の解析に関して、至適濃度、至適作用時間、至適細胞培養環境の設定に時間がかかったが、RTーPCR法を用いた遺伝子発現変化の解析が進行した。
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今後の研究の推進方策 |
小分子化合物の歯原性上皮細胞、歯原性間葉細胞の増殖、分化の分子機構の解明に向けて、Wnt、Bmp、MAPKシグナル伝達経路等に注目しWestern blottingを用いて解析を行う。また、現在効果が確認されている化合物に加え、Wnt、Bmp、MAPKシグナル伝達経路作動薬に関して、歯原性上皮細胞、歯原性間葉細胞の増殖、分化へ与える影響を解析する。 また、機能的な歯の作成には細胞外基質の石灰化が重要な役割を持つ。研究に使用している小分子化合物が、歯原性上皮細胞、歯原性間葉細胞の石灰化誘導能に与える影響を解析する。α-MEM培地に、アスコルビン酸およびβ-Glycerophosphateを加えた石灰化誘導培地にLM22A-4を添加し培養後、細胞外に沈着した石灰化組織の染色をするため、Alizarin Red S染色、von Kossa染色を行い、石灰化条件の検討を行う。さらにマウス歯胚器官培養系を用いて、小分子化合物が歯胚形成において、形態、歯冠の大きさ、分化速度に与える影響について、遺伝子発現や形態変化の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での学会発表、論文の投稿の準備を予定していたが、その機会が得られなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
研究結果を公表すべく、学会発表、論文の投稿準備を進める
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