不正咬合は年々増加し、その原因の一つとして咀嚼刺激の低下に伴う顎骨の成長不足が指摘されている。近年、身体運動時には咀嚼筋に筋電図活動が生じることが数多く報告されている。そこで我々は昨年度に引き続き、身体運動刺激に伴い神経系を介した作用が咀嚼筋に引き起こされ、作動した咀嚼筋運動が成長期の顎骨成長に影響を与える可能性を検証する目的で、成長期に当たるマウスモデルを用いて実験を行った。 実験動物として、成長期に当たる4週齢のC57BL/6 miceを用いた。実験群を2群に分け、対照群および身体運動刺激付与群とした。2週間後の6週齢時に屠殺を行い、分離した下顎骨に対してマイクロCTを用いた放射線学的検討を行った。 昨年度の成果として、成長期における身体運動刺激が下顎骨の形態変化に影響を与える可能性が示唆されたが、今年度は下顎骨に対して部位別に、より詳細な検討を行った。下顎骨を下顎頭、臼歯部周囲歯槽骨および咬筋付着部位の3領域に分けて解析を行ったところ、咬筋付着部位において、運動刺激付与群における骨塩量(bone mineral content、BMC)が対照群と比較して有意に増加していた。 それらのことから身体運動刺激に伴い神経系を介した作用が咀嚼筋に引き起こされ、作動した咀嚼筋運動が成長期の下顎骨の形態変化に影響を与えた可能性が示唆された。
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