成体のモデルマウスを用いた予備実験の結果からは、咀嚼筋の一部に障害がおこることで、咀嚼様式全体に影響が生じることがわかった。本年度はこれらの障害が咀嚼機能発達および咀嚼器官成長過程の時期に起こることで生じる顎口腔器官全体への影響を明らかにするため、乳幼児期機能低下モデルに対して収集した顎口腔機能データおよび形態データの解析を行った。 乳幼児期口腔機能低下モデルの機能解析では、成体モデル同様に顎運動の安定性の低下と顎運動軌跡の変化を認めた。また、経時的に収集した形態データ解析においては、コントロールと比較して下顎頭幅に減少傾向を認めた。これらの結果より、乳幼児期における顎口腔機能の低下は咀嚼様式の変化をもたらし、適切な咀嚼機能の獲得を阻害する可能性があることが示唆された。また、顎骨形態への影響も認められ、機能と形態との相互関連が示唆された。 さらに本年度は、マウス咀嚼の解析手法として高速度カメラとモーションキャプチャーシステムを組み合わせることで確立した光学式6自由度顎運動計測システムを改良し、咀嚼筋活動の同時計測を可能とした。これによりマウス咀嚼時の顎運動と咀嚼筋活動の関連をより詳細に解析することが可能となった。
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