本申請研究は,生力学環境の変化が下顎頭軟骨の細胞外マトリックスの発現にどのような影響を及ぼすのかについて,組織学的および分子生物学的に解明することを目的としている. 2年目である本年度は昨年度の組織学的観察およびmRNAの発現変化の定量に引き続き,DNA含有量の定量,GAG含有量の定量,およびhydroxyproline含有量の定量を行った.結果は,DNA含有量において実験期間を通し,対照群,咬合挙上群とも増加傾向を示した.実験期間の1週目と4週目では咬合挙上群のDNA含有量は対照群に比べ有意に増加した.組織学的観察により各層の厚径増加が認められたが,DNA含有量の結果から,これらの変化は軟骨細胞数の増加によることが考えらえた.GAG含有量では1週目では咬合挙上群で増加を認めたが,2週目以降では両群で減少傾向を示した.mRNAの定量結果を踏まえるとproteoglycanは一般的にGAG鎖を1つ以上含む構造であるが,chondroadherinはGAG鎖を持たない構造となっており,GAG量の増加は,decorin,fibromodullin,lumican,PRELPの各proteoglycan mRNA発現量の増加による変化と考えられる.Hydroxyproline含有量は1週目では咬合挙上群で増加を認めたが,2週目以降は両群とも減少傾向を示し,咬合挙上群のhydroxyproline含有量は対照群と比較し減少した.HydroxyprolineはⅡ型collagenに13.2%含まれる主要構成要素であり,咬合挙上群1週目で増加したことはⅡ型collagenの形成が促進されたことが考えられる. 以上の結果から成長期ラット下顎頭軟骨は,関節荷重の増大によって組織学的変化および下顎頭軟骨の細胞外マトリックスの組成の変化を生じることが示唆された.
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