研究課題/領域番号 |
16K20653
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
佐々木 会 明海大学, 歯学部, 講師 (60580230)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 開咬反射閾値 / 歯牙移動 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
矯正治療は不正咬合の改善や審美的な要因から求められ,小児から成人まで幅広い年齢層を対象として行われている。矯正処置を開始して間もない時期には,患者の多くは歯の移動に伴う激しい疼痛を訴える.このような激しい疼痛は,摂食障害を引き起こし,矯正治療継続に対するモチベーションを低下させる原因となる.歯科領域の疼痛管理には酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が頻用される.炎症部位で鎮痛・消炎効果を示す.しかしながら,PG類は生体内で様々な機能を持っており,その一つに破骨細胞前駆細胞の分化誘導が挙げられる.つまり,NSAIDsの投与が疼痛緩和とともに破骨細胞の抑制(骨吸収抑制)を引き起こすことから,歯の移動を目的とした治療時にNSAIDsの投与は避けるべきと考えられている.このようなことから,歯の移動時の疼痛管理については有効な手段がなく,患者の苦痛軽減のためにも確立が強く求められている.このような社会的要請に応えるべく,明海大学歯学部形態機能成育学講座矯正学分野では,歯の移動に影響を与えない鎮痛薬の探索・開発を目的として系統的に研究を行っている. 実験として、①上顎両側門歯と上顎右側第一大臼歯(移動歯)をニッケルチタンコイルスプリング矯正装置にて連結し,30~50 gの矯正力を負荷。②歯の移動量の定量評価:矯正力負荷前と開口反射誘発閾値測定後、ラットの上顎を印象採得し,模型を作成し,左右の上顎第一大臼歯と第二大臼歯間の距離を精密ノギスにて測定.③第一臼歯部を脱灰し10μmの薄切標本を作製し,TRAP染色にて破骨細胞浸潤を矯正側と非矯正側で比較した。 これらの実験を行い、2017年 Orthodontic treatment-induced temporal alteration of jaw-opening reflex excitabilityがJ Neurophysiolに受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画として、ラットの上顎両側門歯と上顎右側第一大臼歯(移動歯)をニッケルチタンコイルスプリング矯正装置にて連結し,30~50 gの矯正力を負荷する。ラットを矯正装置装着から1日ごとに7日目までの群に分け,以下の実験に用いる。歯の移動量の定量評価:矯正力負荷前と開口反射誘発閾値測定後(矯正力負荷1,3,7日後)のラットの上顎を印象採得し,模型を作成し,左右の上顎第一大臼歯と第二大臼歯間の距離を精密ノギスにて測定する. 次年度以降の計画として、第一臼歯部を脱灰し10μmの薄切標本を作製し,TRAP染色にて破骨細胞浸潤を矯正側と非矯正側で比較する.生理学的・薬理学的検討の結果を中心に国内学会の他にIADRなどの国際学会への参加ならびに国際科学誌(Journal of OrthodonticsとJournal of Dental Researchなど)への投稿を行う予定であった。 これらの実験計画はほぼ、予定通りに進行し、2017年度、国外学会紙への投稿・受理となった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,電気生理学的検討と解剖学的検討を効率よく進める.新規治療薬の探索には上記の他に,PG産生に影響を与えない鎮痛薬としてボツリヌス毒素Aならびに(+)-naloxoneを候補物質として使用する.いずれの薬物もコイルスプリング装着直後から投与を開始し,その効果を前出の方法で生理学的・解剖学的評価を行う. 新たな検討方法を模索し、国際学会で発表予定である。 また、研究は,電気生理学的検討ならびに解剖学的検討ともに,本学歯学部矯正学分野の須田直人教授と薬理学分野の安達一典教授の指導・協力のもとで進められる。同教授の研究室では,筋電図採取の実験ならびに軟硬組織の形態観察を大学院生や専攻生が行っており,彼らの協力も得て効率よく研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画よりも物品費用が少なくなった。若干ではあるが、予定よりも実験を行う回数が少なかったことが考えられる。
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