研究課題/領域番号 |
16K20655
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
唐川 亜希子 昭和大学, 歯学部, 助教 (70552280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗RANKL抗体 / デノスマブ / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
骨格は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収とのバランスによって形成され、異常な破骨細胞活性は骨疾患に繋がる。大理石骨病は骨吸収抑制により骨髄腔が骨で埋まる疾患であるが、発症の時期により重篤度や骨以外の器官における副症状が異なる。申請者は、時期特異的に破骨細胞を抑制できるモデルマウスを作製し、これを用いて骨格形成期である胎児期から小児期・骨が成熟した成人期までの破骨細胞抑制の影響について、骨と他器官との連関も含めて解析することを目的として本研究を行っている。 本年度は、C57BL6/Jマウスにヒト投与量と同等濃度の抗マウスRANKL抗体OYC1を皮下投与し、一過性に破骨細胞活性を抑制する時期特異的破骨細胞抑制モデルマウスを作製した。投与時期を①胎生1週(妊娠1週目の母体に投与)、②胎生2週(妊娠2週目の母体に投与)、③生後1日齢、④生後1週齢、⑤生後2週齢に設定し、乳児期として2~3週齢、成長期として5週齢、成体期として8週齢の体長・体重測定および大腿骨のμCT解析、組織切片による破骨細胞解析を行い以下の結果を得た。胎生1週群では、新生仔は正常な外貌と体重で出産されたが、出生後24時間以内に死亡した。この時、母体、新生仔ともに大腿骨の海綿骨量が増加し、破骨細胞抑制が認められた。生後1週齢群では、投与後のマウスは通常環境下で正常な体長・体重の発育を示した。2週齢時には大腿骨量の増加と破骨細胞数の減少が認められたが、発育後は大腿骨量・破骨細胞数のいずれも対照群と同等程度に回復した。また顎骨、歯牙への影響についても解析を行った。以上のことから、乳児期の一過性破骨細胞抑制に最適な抗マウスRANKL抗体投与時期を生後1週齢として、モデルマウスを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究の要となる時期特異的破骨細胞抑制モデルマウスの確立を目標とし、達成した。投薬による一過性の破骨細胞抑制モデルは前例がなく、申請者は抗RANKL抗体の投与時期を1週毎に調整した。さらに2週齢(乳児期)、5週齢(成長期)、8週齢(成体期)に解析を行うことで破骨細胞抑制が一過性であることをμCT像で確認し、乳児期のモデルマウス作成に最適な投与時期が生後1週目であることを確定した。また、胎生期のモデルは破骨細胞が時期特異的な役割を担う可能性を示しており、検討を継続していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
抗RANKL抗体の効果の持続性を確認するため、平成28年度に作製した乳児期モデルを3~4週齢まで生育して解析する。他器官への影響について、大理石骨病の症状から想定される骨髄幹細胞・骨髄細胞のポピュレーション変動(骨髄機能不全)、耳小骨の形状(難聴)、軟骨形成(低身長)、全身性・局所性炎症(顎骨骨髄炎)、視神経走行(視力障害)等を検討する。また、小児癌モデル(多発性骨髄腫モデル、骨肉腫モデル、癌骨転移モデル等)を作製し、抗RANKL抗体の適応について検討していく。 さらに、歯周病による歯槽骨破壊モデルや抗RANKL抗体長期投与の影響についても解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は作製した乳児期モデルの詳細な解析を行った(申請書では平成29年度に予定)。そのため平成28年度に計画していた疾患モデルの作製を平成29年度に行うこととした。多発性骨髄腫・骨肉種・癌骨転移等の各種モデルは細胞株を購入し、培養後にマウスへ移植して作製する。次年度使用額は平成29年度に株細胞の購入、培養に必要な培地やサイトカインの購入に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
①物品費(1592千円)=実験動物購入・維持(500千円)+動物実験培養機器・株細胞・試薬(170千円)+生理活性物質(300千円)+抗RANKL抗体(500千円)+組織切片作成(122千円)、②旅費(190千円)=成果発表(190千円)③その他(170千円)=論文投稿(120千円)+英文校正(50千円) 総計:約1960千円
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