骨格は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収とのバランスによって形成され、異常な破骨細胞活性は骨疾患につながる。大理石骨病は骨吸収抑制により骨髄腔が骨で埋まる疾患であるが、発症の時期により重篤度や骨以外の器官における副症状が異なる。申請者は時期特異的に破骨細胞活性を抑制できるモデルマウスを作製し、これを用いて骨格形成期である胎児期から小児期・骨が成熟した成人期までの破骨細胞抑制の影響について、骨と他器官との連関も含めて解析することを目的として、本研究を行っている。 本年度は、デノスマブの臨床における適応拡大をめざし、①歯周病歯槽骨破壊への適応拡大を目指す局所投与モデル、②長期投与モデルを作成した。 ①局所投与モデル:成体のC57BL/6マウスの頭蓋骨に歯周病原菌の菌体成分LPSと抗RANKL抗体をコラーゲンゲルで混合し、投与した。頭頂骨ではLPSの作用により破骨細胞数と骨吸収窩が著しく増加したが、抗RANKL抗体の投与により破骨細胞活性が抑制された。また上顎臼歯を絹糸で結紮し作製した歯周病モデルマウスでは歯槽骨破壊とそれに伴う歯根の露出が認められたが、抗RANKL抗体の腹腔内投与によりいずれも抑制された。現在局所への最適な抗RANKL抗体投与法を模索している。 ②長期投与モデル:生後1週齢から7週間、毎週1回抗RANKL抗体を投与した長期投与モデルを作製し、脛骨および大腿骨のμCT解析・組織切片による破骨細胞解析を行った。成長後のマウスは正常な体長と体重を示したが、この時、大腿骨の海綿骨量が著しく増加し、破骨細胞抑制が認められた。顎骨においても同様に破骨細胞数は著しく減少したが、歯牙の萌出に異常は認められなかった。以上のことから、抗RANKL抗体は小児治療において高い安全性と骨への薬効を示すと考えられる。
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