研究課題/領域番号 |
16K20658
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
根本 晴子 (山本晴子) 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (10633943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 低ホスファターゼ症 / アルカリホスファターゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、低ホスファターゼ症の原因遺伝子である組織非特異型アルカリホスファターゼ遺伝子(TNSALP) をノックアウトさせた、低ホスファターゼ症モデルマウス(Alpl KOマウス)の歯髄由来の体性幹細胞培養し、骨芽細胞を分化誘導して培養する。そこで同様に培養、分化誘導させた野生型の骨芽細胞をコントロールとして、低ホスファターゼ症の骨芽細胞の石灰化能を比較して評価を行う。また、Alpl KOマウスおよび野生型の骨芽細胞から抽出したtotalRNAを用いてマイクロアレイを行い、遺伝子発現解を行うことを検討している。そこでTNSALP遺伝子や石灰化に関与する遺伝子の発現レベルを評価する。Alpl KOマウスと野生型を比較し、どちらのどの遺伝子が多く発現しているか、またはどの遺伝子の発現が少ないか、野生型との遺伝子発現レベルの差異をReal time PCRにて定量し解析する。本研究では、以上のことを期間内に行うことを計画している。 本研究において、歯髄細胞を使用した体性幹細胞から、骨芽細胞を分化誘導し培養できることで、遺伝子変異をbackgroundに持つ骨芽細胞の分析が可能となる。このことにより詳細な骨芽細胞の特徴を考察し、今後の低ホスファターゼ症の治療の発展に貢献することを意義とする。この歯髄細胞の分析により、低ホスファターゼ症における未だ明らかにされていない硬組織石灰化不全を解明することが可能と予想される。Alpl KOマウス実験結果をもとにした研究から実際の治療への応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度Alpl KOマウスの作製として、低ホスファターゼ症モデルマウス(Alpl KOマウス)を得るため、Alplヘテロマウスを交配させた。その後、genotypingを行いAlpl KOマウスと野生型(WT)マウスを遺伝型を確認し、Alpl KOマウスと野生型(WT)マウスを得た。 Jaebodinらの手法を用い、genotypingで選別した生後4-10のAlpl KOマウスおよびWTマウスの顎骨より歯を取り出し、歯髄を採取する。コラゲナーゼにて酵素処理を行い、得られた細胞懸濁液を遠心分離して細胞を得る方法を行ったところ、細胞の回収量が十分得られず、他の方法を検討した。代替えの方法として、同様のサンプルから顎骨より歯を採取し、歯髄を1mmの長さに切断し培養液にて播種して培養する方法に変更したところ、十分な細胞数が得られるようになったことから、申請時の計画から細胞の培養法を変更して歯髄幹細胞培養を行うこととした。また、培養した歯髄より幹細胞を分離幹細胞のマーカーであるStroI、CD146、CD105を用いフローサイトメトリー法より細胞選別し分取する予定であったが、幹細胞の回収率が低く、十分な細胞数が得られなかったため、継代培養を2-4回を行う間に得られた細胞を幹細胞として、誘導培地(α-MEM、5%FBS、10mMデキサメタゾン、10mMβ-グリセロリン酸、1mMカルシトリオール、1%ペニシリンストレプトマイシン)に換え骨芽細胞の培養を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
骨芽細胞の石灰化能分析:Alpl KOマウス幹細胞を骨芽細胞誘導培地にて培養し細胞の石灰化能の分析を行う。12wellプレートに、1.5x103個/wellにて培養細胞を播種し、70%コンフルエントになった時点を0日として、骨芽細胞誘導培地にて21日間培養する。2-3日に1度培地交換を行い、day7,day15で10%中性ホルマリン緩衝液にて固定しALP活性染色を行いALPの活性を評価する。day21で10%中性ホルマリン緩衝液にて固定し、アリザリンレッド染色を行う。アリザリンレッドを用い石灰化した細胞を染色し、その色を数値化し石灰化能の分析を行う。 マイクロアレイによる骨芽細胞の分析:Alpl KOマウス幹細胞の培養し、骨芽細胞を得る。12wellプレートに、1.5x103個/wellにて培養細胞を播種し、70%コンフルエントになった時点を0日として、骨芽細胞誘導培地にて7日間培養する。得られたこれらの細胞よりTorizolにてtotalRNAを抽出する。totalRNAよりRT-PCRを行いcDNAを増幅する。cDNAを用いマイクロアレイ(アジレント・テクノロジー社製)をTaKaRaに外注し、WTとTNALP・KO由来の分化細胞における遺伝子発現の比較・分析を行う。WTとTNALP・KOマウスの遺伝子発現を比較して、骨に関わる遺伝子の発現、また発現量の比の差が大きい遺伝子を分析しターゲット遺伝子を決定する。その後の予定として、本研究から得られた石灰化に関与する遺伝子を元に、マイクロRNAにて遺伝子を制御する研究の研究として検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
病理組織標本を外注したところ、作業中に破損しサンプルの再作成が必要になった。そのため受注業者の好意でサンプル作成代金の割引があった。また、購入予定の遠心分離機の発注が見積り書をとった時から2週間遅れたため、キャンペーンが終了し見積りの値段では購入できないことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の助成金と残額を合算させて、遠心分離機の購入を予定している。
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