本研究では、低ホスファターゼ症の原因遺伝子である組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)遺伝子をノックアウトさせた低ホスファターゼ症モデルマウス(Alpl KOマウス)の歯髄由来の体性幹細胞培養した後、骨芽細胞を分化誘導、培養し、低ホスファターゼ症の骨芽細胞の石灰化能を比較して評価を行う。また、Alpl KOマウスおよび野生型の骨芽細胞から抽出したtotalRNAを用いてマイクロアレイを行い、遺伝子発現解を行うことを検討。そこでTNSALP遺伝子や石灰化に関与する遺伝子の発現レベルを評価することを目的としていた。本研究では、以上のことを期間内に行うことを計画していたが、培養した歯髄より幹細胞を分離幹細胞のマーカーであるStroI、CD146、CD105を用いフローサイトメトリー法より細胞選別し分取する過程において、幹細胞の回収率が低く、幹細胞の評価に十分な細胞数が得られなかった。 本研究において、歯髄細胞を使用した体性幹細胞から、細胞を分化誘導し培養を行う上で、Alpl KOマウス由来の歯髄細胞の培養細胞は野生型と比較し発育不良であり、十分な細胞数を得ることが困難であった。このことからAlpl KOマウスの骨形成に関係する細胞の、組織学的分析を行うこととした。day10のAlpl KOマウス及び、野生型マウスの骨形態計測を行い比較した結果、骨芽細胞数が有意に減少していたが、破骨細胞数においては有意差を認めなかった。骨芽細胞数が減少することにより骨形成能が低下し骨の吸収を行う破骨細胞数は減少していないことで低ホスファターゼ症の骨形成が低下していることが考えられた。このことから、低ホスファターゼ症の原因であるTNASLPが骨芽細胞数に関与していることが示唆された。
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