研究課題
唇顎口蓋裂患者では、審美的および機能的な改善を図るために口唇形成術、口蓋形成術が施行される。しかし、術後の瘢痕組織が上顎骨の成長発育に抑制的に働き、上顎歯列弓の狭窄および反対咬合をきたすことが知られている。そこで本研究では、薬剤的なアプローチによる瘢痕抑制を目的とし、in vitro の実験系にて、瘢痕収縮と創傷治癒機構における病態生理的意義が報告されている TRPV チャネルの関連性について検討を行った。ラット真皮由来の線維芽細胞をコラーゲンゲル中に包埋後、表層にケラチノサイトを播種して創傷治癒モデルを作成した。TRPV2 阻害薬によって、コラーゲンゲルの収縮と線維芽細胞におけるα-SMA mRNA 量が用量依存的に抑制された。TRPV2 阻害薬により、ケラチノサイトから放出される TGF-β1 が減少した。ケラチノサイトを播種していない条件下で、TGF-β1 処置によるゲル収縮が TRPV2 阻害薬により抑制された。また、ゲル収縮に伴い、線維芽細胞における TRPV2 ならびにα-SMA mRNA 量の上昇と両タンパクの発現、さらにはケラチノサイトにおける TRPV2 の発現が認められた。TGF-β1 で前処置した線維芽細胞において、TRPV 活性化薬により細胞内カルシウム濃度が増加し、その効果は TRPV2 阻害薬によって抑制された。また、siRNA により TRPV2 をノックダウンした線維芽細胞では、TRPV 活性化薬による細胞内カルシウム濃度の増加が抑制され、α-SMA mRNA 量の減少が認められた。以上の結果より、創傷治癒モデルの収縮において、線維芽細胞とケラチノサイトに発現する TRPV2 チャネルの関与が示唆された。また、TRPV2 阻害薬が瘢痕収縮を抑制する可能性が示唆された。
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Journal of Dermatological Science
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https://doi.org/10.1016/j.jdermsci.2018.03.003