研究課題/領域番号 |
16K20669
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
沢田 啓吾 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70733054)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 歯学 / 再生医学 / 歯周再生医学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、IGFBP6が歯根膜細胞(HPDL)の分化を促進的に制御する分子機序についてIGF依存的、非依存的経路の両面から検討を行っている。平成28年度の研究成果について以下に報告する。 平成28年度は、IGFBP6によるHPDLの分化を促進的に制御する分子機序について、IGF依存的経路に焦点を当て、検討を行った。IGF2はIGFBP6と結合し、IGFBP6の活性制御に寄与する。そこで、HPDLの硬組織形成細胞への分化誘導時にリコンビナントIGF2を添加し、硬組織形成関連遺伝子の発現について検討を行った。その結果、IGF2添加群はIGF2非添加群と比較して、硬組織形成関連遺伝子の発現において有意な差は認めなかった。また、HPDLの硬組織形成細胞への分化誘導時において、リコンビナントIGF2およびリコンビナントIGFBP6を添加したところ、IGF2とIGFBP6を添加した群は、IGFBP6のみを添加した群と比較して、硬組織形成関連遺伝子の発現において有意な差は認めなかった。この両者の結果から、HPDLの硬組織形成細胞への分化において、IGFBP6とIGF2の協調的な役割は認めなかった。その一方で、ADMPC培養上清中に含まれるIGFBP6およびIGF2の濃度を解析した結果、IGFBP6の濃度は約100ng/ml、IGF2の濃度は約30ng/mlであることが明らかとなった。これらの結果から、ADMPC培養上清中に含まれるIGFBP6はIGF非依存的経路を介して、HPDLの分化を制御している可能性が示唆された。 今後の計画としては、IGF非依存的経路として、IGFBP6と結合することが報告されているビタミンD受容体に注目し、IGFBP6によるHPDLの分化制御機構にビタミンD受容体が関与するか否かについて、検討を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には、IGFBP6が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化を促進的に制御する分子機序について、IGF依存的経路に関する解析が完了したため、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の解析結果より、IGFBP6が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化を促進的に制御する分子機序について、IGF非依存的経路が示唆された。そこで、IGF非依存的経路としてビタミンD受容体(VDR)に着目し、同分子機序においてVDRが関与するか否かについて検討を行う。さらに、同受容体の関与が明らかになれば、ビタミンDの産生あるいはVDRの発現によるHPDLの硬組織形成細胞への分化過程での制御機構について解析するとともに、各シグナルの活性化がHPDLの硬組織形成細胞への分化に及ぼす影響について解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に、IGFBP6がHPDLの分化を制御する分子機序に関するIGF依存的経路の解析を行う際に、IGFBP6の発現抑制が奏功しない場合の対応として、HPDLのIGFBP6発現をエレクトロポレーションやレンチウイルスを用いて抑制することで解析する予定としていたが、他の実験から十分な解析結果が得られたため、平成28年度の使用額が申請額よりも少額となり、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の実験結果から、ADMPC培養上清中に含まれるIGFBP6は、IGF非依存的経路を介して、HPDLの分化を制御している可能性が示唆された。 今後の計画としては、IGFBP6と結合することが報告されているビタミンD受容体に注目し、IGF非依存的経路の可能性の一つとして、IGFBP6によるHPDLの分化制御機構にビタミンD受容体が関与するか否かについて、検討を行っていく予定である。
|