研究実績の概要 |
慢性歯周炎は細菌感染により惹起され,炎症の進行に伴い骨欠損等の歯周組織破壊を引き起こす。その病態は複雑であり,不明な点も多い。そのため,病態解明及び新規治療薬の確立が期待されている。一方,申請者らは、歯肉上皮細胞においてDNAメチル化が炎症反応を制御している可能性を見出している。本研究では,さらに,歯周炎の病態とDNAメチル化の関連を解析し,エピジェネティクスを標的とする新規歯周治療薬を開発すること目的としている。 本年度はマウスの臼歯部に結紮糸を留置し歯周炎を誘導する歯周炎モデルマウスの作成に成功した。またそのマウスを用いて,DNAメチル化阻害剤であるDecitabineをoral gavage法で投与することで,実験的歯周炎により誘導される歯槽骨吸収が抑制されることを明らかにした。次に、そのメカニズムを同定するため,組織切片を作成し,TRAP染色により破骨細胞の活性化を調べたところDecitabineは破骨細胞活性を抑制した。また,免疫組織染色により,DecitabineはRANKL-OPG発現のバランスに影響を及ぼすことを示した。さらに、CD14+単球を用いた破骨細胞分化実験において、Decitabineは破骨細胞分化を抑制し,さらに抗炎症性サイトカインであるIL-10,TGF-βのmRNA発現を亢進させることを確認した。つまり,本研究においてDecitabineは抗炎症性サイトカイン発現を誘導し,破骨細胞活性に関与するシグナル経路を制御することで,歯周炎モデルマウスの骨吸収を抑制する可能性が示された。
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