研究課題/領域番号 |
16K20676
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
清水 伸太郎 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (80734235)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯学 / 遺伝子 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
歯周炎関連遺伝子を同定するためのゲノムワイド関連解析(GWAS)をアジアで初めて行い、関連の示唆される遺伝子GPR141(Gタンパク結合受容体141)を報告した。GPR141の遺伝的多型は歯周炎の感受性に関連するだけでなく、喫煙と遺伝子環境相互作用(G-E interaction)を有していた。本研究でGPR141の発現と機能、歯周炎との関連及び喫煙とのG-E interactionを研究する。 歯周炎患者と、健常者の検体を収集しGPR141上のSNP(rs2392510)の遺伝子型を同定、血清コチニン濃度を測定し、歯周炎への遺伝的リスクと喫煙との関連を検討する。H27年時点で歯周炎患者114人を収集済みで、内113人はrs2392510遺伝子型同定済みであり、歯周炎患者130人、健常者46人を目標とする。血清中コチニン定量はELISAにて行う。血液からのDNAの抽出は外部機関であるビー・エム・エル(株)に依頼する。SNPの遺伝子型の同定はApplied Biosystems 7500HT Fast Real-Time PCR Systemを使用する。血中コチニン濃度とGPR141の関連より、喫煙を介した歯周炎へのリスクとなる遺伝子型を同定する。THP-1を培養し、LPS刺激時及び無刺激のTHP-1からmRNAを抽出し、RT-PCR SystemにてGPR141の発現を定量的に測定する。ルシフェラーゼアッセイによりGPR141の転写調節因子の影響を測定する。GPR141をノックダウンした、THP-1のサイトカインの定量をRT-PCRにて行う。以上からGPR141の炎症下での遺伝子発現の変化、炎症性サイトカインへの影響を測定し、歯周炎発症への経路を考察することで、歯周炎の新たなメカニズムの一端を明らかにする可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被験者は北海道医療大学大学病院、または北海道医療大学歯科クリニック、歯科及び内科を受診された歯周炎患者、健常者で、H27年時点で、歯周炎患者114人収集済みであり、内113人はrs2392510遺伝子型同定済みである。歯周炎患者130人、健常者46人を目標としているが、内科的臨床情報を得られる健常者は採血の同意がとり辛く特に収集が困難なため、現在歯周炎患者115人、健常者24人である。血液2mのDNAの抽出は、依頼する場合は臨床検査部で保管をしてもらう必要があり、臨床検査部の状況次第で一時保存が困難であった。血清中コチニン定量はELISAでCotinine ELISA kit(Abnova)にて32名分終えている。SNPの遺伝子型の同定はApplied Biosystems 7500HT Fast Real-Time PCR System、及びTaqManを使用する方法ではアレルの特定には経験と適切なプロトコールが必要であるため困難であった。 北海道医療大学に保管中のTHP-1をRPMI 1640にて培養し、LPS刺激時及び無刺激のTHP-1から、ISOGENを用いてmRNAを抽出し、Applied Biosystems 7500HT Fast Real-Time PCR System、SYBR Green、特異的Primerを使用しGPR141の発現を定量的に測定したが、遺伝子型と発現量との関連を解析することで歯周炎へのリスクを検討することを目標として再度計画を検討した。GPR141の炎症下での遺伝子発現の変化、炎症性サイトカインに対する影響を確認し歯周炎発症への経路を検討する予定である。また、歯周炎患者から採取した歯肉結合組織からGPR141の発現をみることが可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
H27 年現在、歯周炎患者114 人収集済みであり、内113 人はrs2392510 遺伝子型同定済みである。歯周炎患者130人、健常者46人を目標としているが、採血の同意の取り辛い健常者は、協力を得やすい健康診断の結果を有する大学職員から収集することで対応している。血液2mのDNAの抽出は、依頼する場合は臨床検査部で保管をしてもらう必要があり、QIAamp DNA Mini Kitを使用し自分で全て行うこととした。被験者の血清コチニン濃度を32名分測定しており、残りの検体も行う予定である。SNPの遺伝子型の同定はApplied Biosystems 7500HT Fast Real-Time PCR System及びTaqManを使用するより、アレルの特定には310 Genetic Analyzer、BigDye(r) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitを使用しシークエンスにて同定する方が確実と考え、計画をしている。 ストック中のTHP-1を培養し、LPS刺激時及び無刺激のTHP-1から、mRNAを抽出しGPR141の発現を定量的に測定可能であることを確認したが、採血した血液からフローサイトメトリーを用いて単球を分離、培養し使用することで遺伝子型と発現量との関連を解析することとした。またGPR141の炎症下での遺伝子発現の変化、炎症性サイトカインに対する影響を確認し歯周炎発症への経路を検討する予定である。 以上の実験からGPR141の歯周組織状態への遺伝的リスクの検討と、血清コチニン濃度との関連より喫煙を介した歯周炎へのリスクとなる遺伝子型を同定することができる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
血液2mのDNAの抽出は、外注せずQIAamp DNA Mini Kitにて行うこととした。SNP遺伝子型の同定はApplied Biosystems 7500HT Fast Real-Time PCR System及びTaqManを使用せず、310 Genetic Analyzer、BigDye(r) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitにてシークエンス行うこととした。保管中のTHP-1を培養し、LPS刺激時及び無刺激のTHP-1からGPR141の発現を定量的に測定したが、採血した血液からフローサイトメトリーを用いて単球を分離、培養して遺伝子型と発現量を解析することとした。以上計画の変更により金額に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
歯周炎患者130人、健常者46人を目標とし検体採取中である。血液2mのDNAの抽出は、QIAamp DNA Mini Kitにて行う。血清コチニン濃度を測定する。SNP遺伝子型の同定は310 Genetic Analyzer、BigDye(r) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitにてシークエンスにて同定する。ストック中のTHP-1を培養し、LPS刺激時及び無刺激のTHP-1から、mRNAを抽出しGPR141の発現を定量的に測定可能であることを確認している。今後採血した血液からフローサイトメトリーを用いて単球を分離、培養し使用することで遺伝子型と発現量との関連を解析する。またGPR141の炎症下での遺伝子発現の変化、炎症性サイトカインに対する影響を確認し歯周炎発症への経路を検討する予定である。
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