研究課題/領域番号 |
16K20677
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
伊東 順太 城西大学, 薬学部, 助教 (40609096)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 破骨細胞形成 / ポリメトキシフラボノイド / スダチチン |
研究実績の概要 |
骨量は、破骨細胞による骨破壊および骨芽細胞による骨形成のバランスにより一定に保たれている。一方で活性酸素種(ROS)が破骨細胞においてRANKLの細胞内シグナル伝達物質として働くとの報告がある。近年、日本原産の香酸柑橘類であるスダチ果皮特有のポリメトキシフラボノイドsudachitin(SD)が抗炎症・抗酸化作用を持つことが報告されている。そこで、本年度はin vitroの破骨細胞形成系を用いてSDの破骨細胞形成および骨代謝に対する効果を明らかにすることを目的とした。 SDは濃度依存的にTRAP陽性破骨細胞数および培養上清中のTRAP活性を減少させた。そのうえ、用いた濃度のSDに細胞毒性がみられなかったことから、SDの破骨細胞形成抑制作用が細胞毒性からもたらされるものでないことが示された。そこで、破骨細胞分化関連タンパク質の遺伝子発現を定量性real-time PCRで検討した結果、SDは破骨細胞分化関連転写因子c-FosおよびNFATc1のmRNA量を大きく減少した。それに伴って、破骨細胞の機能タンパク質であるcathepsin KとAcp5 (TRAP)、および破骨細胞の細胞融合関連タンパク質であるAtp6v0d2、DC-STAMP、OC-STAMPのmRNA発現がSD添加によって減少した。また、これらの発現抑制作用はタンパク質レベルでも確かめられた。さらに、これらの詳細なメカニズムを明らかにするため破骨細胞分化シグナルおよび破骨細胞前駆細胞内のROSの産生を検討した結果、SDがRANKLによるErkの活性化およびROSの産生を抑制することが確認された。 以上のことからSDは、RANKLによる細胞内ROS産生を抑制し、破骨細胞分化シグナルを阻害することによって破骨細胞分化を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、in vitroおよびin vivoにおけるsudachitinの骨代謝に対する効果を明らかにすることを目的としており、本年度においてin vitroにおける解析が順調に進み、当初の予定通り進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vitroにおけるsudachitinの骨代謝に対する効果について解析を完了させ、次にin vivoにおける炎症性骨破壊モデルを用いたsudachitinの炎症性骨破壊に対する効果を明らかにすることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、実験に使用するサイトカイン(M-CSFやRANKL)が当初予想していたよりも使用量が下回ったためと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はin vitroによる解析に加え、in vivoにおける解析を実施する予定であることから、物品費(動物購入のための費用および動物実験に関わる費用)が増加することが予測されるので、そのために充足させたいと考えている。
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