研究課題/領域番号 |
16K20681
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
五十嵐 寛子 (武内寛子) 日本歯科大学, 生命歯学部, 非常勤講師 (30713424)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 喫煙 / 禁煙 / ニコチン / 歯肉線維芽細胞 / 歯根膜線維芽細胞 / 上皮細胞 / 血管内皮細胞 / 線維化 |
研究実績の概要 |
近年、分煙や禁煙がうたわれているが日本における喫煙率は減少傾向を示すものの未だに高い状況にある。喫煙者の臨床的所見の一つである歯肉の肥厚に関し有力な論文がないことから、申請者は線維化因子として医科領域で研究が行われている比較的新しい成長因子であり、当時歯科分野に焦点を当てた研究が少なかった結合組織増殖因子(CCN2/CTGF)に着目し、タバコの有害成分であるnicotineに暴露された歯周組織モデルとして喫煙と歯周組織の線維化について研究を行った。その結果、nicotine刺激により増加したCCN2/CTGFによりType I collagenの発現が誘導され線維化へ向かうことを明らかにし、細胞外マトリックスへの影響を検索し喫煙モデルにおいてnicotine刺激によりMMP-1は有意な抑制が認められた一方、TIMP-1は有意な発現の亢進が認められ、CCN2/CTGFの上流に位置するTGF-β1の有意な増加を示し、恒常性の破たんが生じていることを示した。医科分野では喫煙とCCN2/CTGFの関係は肺の慢性閉塞性疾患において発現の増加が報告されているが、歯科においてこれらの関係を示したのは申請者が初めてだった。 申請者はnicotineによる細胞への与える影響について研究を行ってきたが、これらの刺激を中断した「禁煙」によって細胞がどのように変化してくのか検索を行う必要性を感じた。 直接nicotineの曝露に直面する上皮細胞や血管内皮細胞の影響、刺激を除去した後の変化についての検索結果を示すことで喫煙の影響および禁煙の効果について患者の理解を向上させることを目的として行う。これは今一度禁煙をよびかける一助になる医学的側面と共に社会的意義も高い研究と考える。 現段階はヒトからの歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞、上皮細胞および血管内皮細胞の分離と樹立を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の計画として、まずはじめに各種細胞(ヒト由来の上皮細胞、歯肉線維芽細胞、歯根膜線維芽細胞、歯根膜由来血管内皮細胞)の樹立を行う。それぞれ各種細胞にnicotineを曝露することで喫煙モデルとし、nicotine曝露後の細胞について形態学的検索、各種タンパク質の検索、アイソトープを用いてnicotineの取り込みについての検索を行うこととした。 歯肉線維芽細胞および歯根膜細胞の分離・樹立は完了しており、形態変化など実験進行中である。 研究進歩状況が遅れている理由は、歯根膜に存在する血管内皮細胞は数的に少なく従来行ってきた方法ではなく、新たな手法による分離・樹立を立案し進行中であるためである。今まで使用してきた培地の生産中止などによる中断も生じた。 同様にヒト歯肉からの上皮細胞分離方法は大変困難であり、現在進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の実験計画の主要ポイントは各種細胞の分離であり、許容範囲内の遅れだと考えらえるため、現段階では研究計画の変更は考えていない。 当初の予定どうり、H29年度の研究内容を進め並行して上皮細胞および血管内皮細胞の分離を行うこととする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅延により当初予定していた物品購入品が未購入のため。
|
次年度使用額の使用計画 |
現段階での研究の遅延は許容範囲と考えており、使用計画の変更はない。
|