研究実績の概要 |
新たに購入した歯肉上皮(GF)細胞株を腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor-α;TNF-α)で刺激し,0,12,24および48時間後のGF細胞からmRNAsを抽出し,realtime PCR法にてIL-34およびCSF-1のmRNAsを評価した.その結果,TNF-α誘導性にGF細胞は,IL-34およびCSF-1のmRNAs産生量が上昇した. 歯周炎を有する同意を得られた8名の患者から採取した肉芽組織よりmRNAsを抽出し,IL-34,CSF-1,TNF-α,IFN-γおよびIL-1βの発現をRealtimePCRにて評価した.すべての患者でIL-34,CSF-1およびRANKLの発現は確認できたが,患者の歯周炎の臨床指標と発現程度の相関関係を認めなかった.また,mRNAにおけるTNF-α,IFN-γおよびIL-1βなどの炎症性サイトカインの発現とIL-34やCSF-1との相関性を認めなかった.同様の組織を免疫染色法にて評価したところ,IL-34の発現をすべての組織で確認できたが,その発現の程度と歯周炎の臨床指標との相関関係を認めなかった. rhIL-34がPDL細胞に与える影響をmRNAsレベルで評価した.rhIL-34によりPDL細胞におけるIL-34,IL-34とCSF-1の受容体であるCSF-1Rの発現に変化を認めなかった. 以上と以前の結果より,TNF-α刺激によりPDL細胞やGF細胞でIL-34やCSF-1の発現は誘導され,分泌されたIL-34やCSF-1が破骨細胞形成因子として働く可能性が示唆された.破骨細胞の分化・成熟機構とミトコンドリア系カスパーゼ,細胞膜表面受容体系カスパーゼ,小胞体系カスパーゼおよびストレス系カスパーゼなどの関与を調べることを今後の検討課題としたい.
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