研究実績の概要 |
三重県A町の学童(小学3年生)227名を対象としたオープンラベルでの教育介入プログラムの結果、介入群において6か月の観察期間後、乳歯未処置歯数(d)の低下を認めた。また介入群ではかかりつけ歯科医院に対する受診率が高かった。これら結果から、児童及びその保護者に対する本プログラム‐児童及び保護者へのリーフレットの提供とう蝕リスクの分析、う蝕要検査対象児童及び保護者への受診喚起等‐が、児童及び保護者の口腔保健行動に影響を与え、さらに直接的な児童のう蝕予防に対し有用である可能性が示唆された。今後本プログラムを修正の上、県内の学童のさらに幅広い年代を対象として活動を進める予定である。なお本結果を三重県歯科医師会と共に第70回三重県公衆衛生学会(津市)において報告した。 三重県29市町において平成28年8月~平成29年3月にかけ、3歳児健康診査対象児童の保護者5, 425名を対象に、リスクが示唆されている、保護者および児童の生活習慣や社会経済的状況を自記式質問票にて調査した。分析の結果、地域における社会福祉サービスの提供の程度(歯科医院数、地域における保健師の数等)よりも、むしろ主たる保護者の社会的要因、すなわち勤務形態(日中勤務、夜間勤務)や職業が、児童の多数歯う蝕に関連する一要因であることが明らかとなった。また、周囲からの受動喫煙も多数歯う蝕のリスク要因であった。地域におけるう蝕格差を減少させる方法の一つとして、口腔保健行政に携わる関係者が、これら結果に基づき、1歳児半や3歳児健康診査の問診票取得時に、保護者の生活習慣や社会的要因を同定の上、う蝕発症リスクの高い児童およびその保護者に対し、指導やフォローアップをすることが可能となることが示唆された。本結果を、第66回日本口腔衛生学会・総会(山形市)、平成28年度三重県歯科保健担当者会議及び三重県健康福祉部に報告した。
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