研究実績の概要 |
岡山大学歯学部は多職種連携の実際を体験するだけでなく,生死の間にある患者やその家族と接することで,医療人としてそういった患者やその家族に対して, 主体的に行動できる力を育むことを目的とした実習を実施している。実習を受けた学生を対象に,多職種連携教育の準備状況や志向性を測定するため,国際的に用いられているRIPLS(Readiness for Interprofessional Learning Scale)を中心とした評価ツールを作成し,それを実習前後に用いた。 その結果,チーム医療に参加すると考える職種数および自分が協働すると考える職種数は10週前に比べて増加した。また,多職種連携に関する準備状況や志向性も同様に上昇することがわかった。さらに,実習の中で,歯学部生に上記のような患者およびその家族を院内でエスコートするという役割を与えることは,医療人として必要なプロフェッショナリズムを育むことを示唆した。 一方で,研修歯科医に対して歯学部に所属していない3職種によるセミナーを実施したが,多職種による単回のセミナーは一時的な教育効果に限られることがわかった。 また,岡山大学歯学部と実習内容は異なるが,管理栄養士養成校から学生を受け入れ,多職種連携の場を用いた実習を実施している急性期病院で同様の評価ツールを実習前後に用いた。但し,上記病院で本研究最終年度に受け入れた学生は1名であったため,歯学以外の専攻分野の学生に対して使用することに支障はなかったものの,評価ツールの妥当性や信頼性の検討については課題が残った。 さらに,歯学部1年生に対して終末期医療に関するシミュレーション教育を実施した。その結果,学生のターミナルケア態度が上昇した。さらに,終末期患者に対して,歯科医師側と患者家族側双方からのサポートを考えようという教育的効果が生じることが示唆された。
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