2016年1月から2017年2月までに京都府立医科大学附属病院歯科外来を受診した成人のうち、歯髄処置または抜歯処置をした205名を対象とし、処置歯髄・唾液・歯垢を採取し、それらのサンプル内のHelicobacter pyloriの有無をPCR法を用いて検証した。また、尿抗体検査で全身のピロリ菌感染の有無を確認し、口腔内の種々のサンプル内のH. pyloriの有無と全身感染の関連を検討した。他の採取資料・試料は、自記式質問票による生活習慣・口腔衛生習慣、既往歴、H.pylori除菌歴等であった。 解析対象となった192人中25人(13.0%)が尿中抗体検査にてH. pylori感染陽性であった。また、192人中23人(12.0%)の歯髄よりH. pyloriが検出された。21人はH. pylori感染及び歯髄からの検出の両方がみられた。歯垢からH. pyloriは2人検出されたが、唾液からH. pyloriは検出されなかった。また、歯髄H. pylori陽性者の内、重度う蝕・重度歯周病混合が66%(15/23)、重度う蝕が30%(7/23)と診断され歯科処置を行っており、合わせて96%(22/23)がう蝕を有していた。また、重度歯周病と診断された者は4%(1/23)であった。 以上よりH. pylori全身感染しているものは、口腔内では歯髄にH. pyloriが定着しやすいこと、唾液や歯垢など流動性の高いところは、定着しにくいことがわかった。う蝕の早期発見・早期治療はピロリ菌の定着防止につながる可能性がある。
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